十九話 ページ25
昔から、私の妹は可愛くて人懐っこくて、
誰ともすぐに仲良くなれた。
友達と茶屋へ行ってお団子を食べたり、
一緒に祇園祭へ出掛けたり。
……目つきが悪くて、
人付き合いの苦手な私とは大違いだった。
――四年前。
「やめて、もうやめて……」
けれどある日、私は見てしまった。
妹が仲の良かった友達にいじめられている姿を。
「どうして……?
ひぃちゃん、ちかちゃん……!」
「何がひぃちゃんよ! 気安く呼ばないで!」
「私達、友達でしょ?」
二人の女の子は響希の言葉に声を上げて笑った。
「そんな訳無いでしょ?」
「少し優しくしたら懐かれちゃって
本当に困っちゃった」
「どうして……痛っ!」
――妹は手をじりじりと踏まれていた。
私は最初は理解できなかった。
頭の中が真っ白だった。
「今までのは……嘘だったの?」
「当たり前でしょ!」
「あんたって本当に馬鹿だよねぇ。
何でも笑って解決しようとしちゃって
鬱陶しいのよ!」
ぼろぼろと大粒の涙を零す響希を見下ろしながら、
少女たちは面白そうに口を開く。
「でも、響希は私達と一緒に居たいって
望んでるんだよね?」
こんなにも痛めつけられて傍に居ようなんて、
そんな都合の良い話があるか。
私はそう思ったけれど。
「……そうだよ。
私はひぃちゃんと、ちかちゃんと、一緒に居たいよ」
改めて認めてしまう程、妹は優しい子だった。
「……そっか。じゃあ一緒に居てあげる。
遊んであげるよ」
彼女らの黒い微笑みにようやく気が付いたのか、
妹は助けを求めるように問いかける。
「何、するの……?」
「だから、遊んであげるって言ったでしょ」
……この時、私の足は既に動き始めていた。
「せえーの!」
「待ちなさい」
思ったよりも低く出た自分の声に、
少女らは軽く身を震わせた後、
私の方へと視線を寄こす。
「……何?」
彼女らの問いには答えず、私は響希に駆け寄った。
「大丈夫?」
「お、姉ちゃ……」
「あれ、響希のお姉さんじゃないですか。
こんにちは」
年上を相手にしてもなお、
二人の少女は嘲笑うような態度をとっている。
けれどその笑顔は私に向けられたものではない。
私が抱きかかえている、身体中があざだらけの響希に向けられたものだ。
「……どうしてこんなこと」
「どうしてって、
私たちはただ楽しく遊んでいただけですよ?
ねぇ? 響希」
「っ……」
妹の身体はガタガタと震えていた。
――その後、私の意識は飛んでしまった。
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作者名:reika. | 作成日時:2012年7月5日 20時