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十八話 ページ24

――巡察の帰りに八番組の隊士さんたちと別れ、
私と藤堂さんは私の自宅へ向かった。

中は静まり返っていて、部屋も埃まみれだった。

「けほ、けほ……
これは一回掃除した方がいいかもしれません」

そう言って笑ったけれど、
藤堂さんは心配そうに私を見つめている。

「……どうだ? 久しぶりの自分の家は?」

彼なりに会話を作ろうとしてくれているんだと思う。
私を元気づけようとしてくれて。

「……何だか、自分の家ではないみたいです」

小さく呟き、あの日々を思い返す。



――いつもなら、もっと騒がしかった。
母は働いていて忙しそうだったけれど、
この時間には台所に居た。

買い出しなどから帰ってくると、
母が必ず出迎えてくれた。
優しい声で、おかえりと言ってくれた。



「……ただいま」

けれど、今は。

「母上、帰ってきましたよ。ただいま」

どんなに母上を呼んでも、もう。

「……どうして、何も言ってくれないのですか」

もう、母が出迎えてくれることは二度と無い。
二人は、本当に居なくなってしまった。

もう、過去に戻ること出来ない。

それを痛感して、唇を強く噛み締めた。

「……」

「わ、悪ぃ!俺が変な事訊いちまったから……」

藤堂さんは私の顔を見てばつが悪そうに謝った。

「え……あ……」

彼の表情を疑問に思い自分の頬に触れてみると、
冷たい涙が流れている事に気がついた。

「ごめんなさい。私……」

私はこんなに泣き虫だっただろうか。
いつからこんなに泣くようになったのだろうか。


……「あの日」の出来事があってから。

知っている。
そんなことはもう、とっくにわかっている。

けれど頭の中でまだ、
この出来事を受け入れられていない私もいる。

今の私は、あの日の響希以下だ。

響希に真実を押し付けて。

けれど実際は私も――

二人が居なくなってしまったという
真実を受け入れられていなかったのだ。

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作者名:reika. | 作成日時:2012年7月5日 20時

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