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十七話 ページ23

「じゃあ、君も起きたし僕はもう行こうかな」

沖田さんが立ち上がった瞬間。
私の部屋に明るい声の主が入ってきた。

「吹雪!」

「あ、おはようござ……ではなく、
こんにちは藤堂さん」

「おう、こんにちは! よく眠れたか?」

お陰様で、と笑顔を作る私に、
彼も太陽のように眩しい笑顔を返してくれる。

「そっか。これから巡察に出かけるけど
お前はどうする?」

そうだ、今日は彼の巡察に同行する予定だった。

「行かせてください! すぐに準備します!」

「わかった。んじゃあ門の所で待ってるな!」

一連の会話を聞いていた沖田さんは、
探るように藤堂さんを見つめている。

「何? 平助、ついに女の子を口説くことにした?」

「ば!? んな訳ねぇーだろ!」

わかりやすいように顔を赤らめる藤堂さんに
追い討ちをかけるように、沖田さんは
にんまりと口角を上げる。

「ふーん? ……でも、案外吹雪ちゃんは
口説かれたいと思ってたり思ってなかったり?」

「な、何をおっしゃるんですか!
そんな訳ありません!」

彼のお得意の冗談だとわかっていても、
つい顔が熱くなってしまう私たちだった。



――急いで巡察に出る準備をした後、
私は藤堂さん率いる八番組の皆さんと
京の町へ訪れた。

「賑わっていますねえ」

昼間の町は沢山の人で明るい雰囲気を漂わせている。

今日の巡察ではそれと言った不逞浪士も
見かけなかったので、隊士の皆さんの様子も
どこか穏やかだった。

「お前、ただ出ただけでそんなにはしゃぐか?」

いつもよりはるかに興奮しているであろう私を、
彼は物珍しそうに見つめてくる。

「はい。何だかとても久しぶりな気がして」

私の言葉に藤堂さんは申し訳なさそうに
顔を伏せてしまう。

「ずっと、屯所の中だったもんな」

それが逆に気を遣わせてしまったように思い、
私は出来る限りの笑顔を作った。

「はい。だからこうしてまた外に出ることが
出来てとても嬉しいんです。
藤堂さんが機会を作ってくださったおかげです。
本当にありがとうございます」

私の言葉に少し驚いたのか、
彼は俯いていた顔を上げる。

「……そっか。お前が喜んでくれて嬉しいよ。
俺に出来るのはこれぐらいしか無いからさ!」

私の態度に安心したように藤堂さんはニカッと笑う。

その笑みは相変わらずとても眩しいもので。

私も彼の笑顔に釣られるのだった。

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作者名:reika. | 作成日時:2012年7月5日 20時

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