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十五話 ページ21

「お気遣いありがとうございます、藤堂さん!」

私が頭を上げると、
彼はなぜか複雑そうな顔をしていた。

「あのさ。それ……その藤堂さんってやめない?」

彼の言葉に私の思考が一瞬停止する。

「皆俺のことは平助って呼んでるし?
気軽でいいんだぜ、その方がしっくりするし」

言ってみ?と、
私が口を挟む前にどんどんと話が進んでいく。

……空気を読むべきだろうか。
そう思い意を決して彼の名を呼ぶことにする。

「では……へ、へいっくしょん!」

「いやそこでくしゃみすんなよ。
……もう一回な。平助って言ってみ?」

藤堂さんの見事な突っ込みを受け、
私は恥ずかしい気持ちになる。

「す、すみません。なんだか鼻がむずむずして。
……へ、へい、す……」

……。

幼い頃に男友達が居なかったせいか、
突然の名前呼びは私にとって想像を絶するほど
難関なものだった。

「う〜ん……ま、仕方ねぇか!」

藤堂さんは少し残念そうに笑った後に、
んじゃ敬語は無しな!
と更に無茶ぶりをかけてくる。

「そんな、ええと、……む、無理です!!」

敬語も崩せないという私の返事が予想外だったのか、
藤堂さんは二、三回目を瞬かせた。

けれどもう関係無い。
これ以上彼に合わせてしまえば、
私は私でなくなってしまう気がした。

「敬語をなくすなんて、私には無理です!!」

私の威圧に押されてか、
藤堂さんはわ、わかったわかったと言って
苦笑いを浮かべる。

「……まあ、そのうち慣れてきたら
普通に話してくれよ」

「……は、話せるように頑張ります」

私の言葉を聞いた彼は嬉しそうに、
そして無邪気に笑うのだった。




新選組はもっと怖い人が多いとばかりだと
思っていたけれど、そんなことは
無いのかもしれない。

皆さんとても優しくて、暖かい。

……けれど。

まだ私が信用された訳ではない。
完全に彼らから信用される日なんて、
二度とくることが無いのかもしれない。

「どうした?」

浮かない顔をしていたのだろうか、
彼に話しかけられて私は咄嗟に笑顔を作る。

「いいえ、何も!」

彼とは少し会話を交わした後に、
また明日、と言って別れるのだった。

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作者名:reika. | 作成日時:2012年7月5日 20時

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