薄桜鬼～花吹雪物語～ (ページ20)

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十四話ページ20

――その後、私達は静かに夕食の時間を過ごした。

「ご馳走様でした」

夕食も食べ終わり、自室へ戻ろうとした時だった。

「なぁ、吹雪！」

聞き馴染みのある声に振り返ると、
案の定藤堂さんと目が合う。

藤堂さんはとても明るくて、まるで先程のことなど
無かったかのように私に接する。

……それくらい関わってはいけない
ということなのだろう。
いや、自分の生死を考えればその方が有難かった。

「どうしました？」

なるべく私も笑顔を作る。

「お前さ、一度自分の家に戻って
荷物とか持って来ねぇの？」

彼の予想外の問いに驚いた。
それは、戻りたい気持ちは山々だけれど。

「屯所の外に出てもいいんですか？」

屯所の外に出る事は基本禁止されているから、
断る以外に選択肢なんて無い。

そう思っていたところで藤堂さんが
思いついたように言葉を紡ぐ。

「別に巡察に出かけるくらいだったら
土方さんも許可してくれると思うけど？」

「……巡察とは、あの京の町を見回りする？」

私の質問に彼はああ、と頷いた。

「俺たちでよければ、だけどな」

「なぜですか？」

すると藤堂さんは少し寂しそうな顔をして言う。

「なぜって……俺達、京の町の人に怖がられてるし。
俺達に同行したら、もしかしたら不逞浪士と
厄介事になっちまいそうだし」

確かに、彼らと京の町を同行するという事は、
もしかしたら命を落とす危険性も
あり得なくもない話だ。

「でもさ、それでも良かったら一緒に来ねぇか？」

彼の気遣いに感動して黙り込んでいると、
彼は慌てたように言葉を続ける。

「あ！別に無理しなくてもいいんだけど。
でもお前、ずっと屯所にこもってるだけじゃ
暇だろ？」

たしかに、ずっと部屋にこもっているのも退屈だし、
彼の言う通り荷物も取りに行きたい。

「ありがとうございます。
あの……では、宜しくお願いします」

「おう！じゃあ早速明日でいいか？」

私が頷くと、藤堂さんは満面の笑みを浮かべた後に、
そうだ、と思い出したように言った。

「吹雪たちって急に此処に来たから、
袴の数が足りないよな。
折角だし巡察の帰りに追加分も買いに行こうぜ。
土方さんには俺から頼んでおくよ」

ここまで気が利く人が居るなんて。
そんなことを考えながら、
有難さを噛み締めるように深く頭を下げる。

「わざわざすみません。
お気遣いありがとうございます、藤堂さん！」

私が頭を上げると、
彼はなぜか複雑そうな顔をしていた。