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十一話 ページ17

――文久四年一月。
夕暮れ時、広間にて。


「腹減ったー!」

大きな声を上げながら広間に顔を出した藤堂さん。
彼の背後には原田さんに永倉さんも居た。

「今日は確か吹雪と千鶴が当番だったよな」

思い出したように言う原田さんに私は小さく頷く。

「今、千鶴さんと交互に持ってきますので」

そう。
今日の夕飯の炊事担当は私と千鶴さんの二人。

此処でお世話になることになってから数月が経ち、
私も幹部の皆さんと一緒に食事を取ることが
出来る処遇となっていた。

「いいねぇ、女の子二人で飯作りなんて!」

今日の飯はいつもの倍美味いんだろうなあ、
と満足そうに笑う永倉さんを
藤堂さんは冷めた目で見つめていた。

「新八っつぁんはいつも女女ってうるさいよなぁ」

「なに!? 平助だってそうじゃねぇか!」

「はぁ!? 一緒にすんなよな!」

二人がじゃれ合っていると、
広間に千鶴さんが顔を出した。


「皆さん、お夕食をお持ちしました」

彼女の言葉に広間の中は一層賑やかなものに変わる。

「今日の飯はいつものせこさが無くて
豆腐三昧でもなくて、何倍も美味そうだな!」

永倉さんのその一言で、
斎藤さんと沖田さんは顔をしかめる。

「それはどういう意味だ新八」
「まるで僕たちの料理がまずいみたいな
言い方だけど?」

二人の冷たい視線に気がついたのか、
永倉さんは首を大きく横に振った。

「いやいや、まずいなんて
そんなこと言ってねえじゃん!」

笑って誤魔化す永倉さんの横で
既に藤堂さんは両手を合わせていた。

「んじゃ早速、いただきまーす!」

んめえ!と永倉さんは白い歯を出して笑顔を作る。
千鶴さんはお膳に乗っている小皿を指差した。

「それは吹雪ちゃんが作ったんですよ」

「へ〜、お前料理上手なんだな!」

藤堂さんは感心したように私を見る。
「あ、ありがとうございます」

想像以上の反応に、思わず顔が熱くなった。

「味付けもいいしな」
「辛くも無く丁度良い」
「一君みたいに薄くもないしね」

付け足した原田さんと斎藤さんに沖田さん。
賑わっていた空気が嘘だったかのように
一瞬で静かになる。

原因は勿論、このお二人だ。

「……総司はいつも味が濃いのだ」
「一君は薄すぎるんだよ」
「味噌汁が辛くなるのは何故だ」
「じゃあ聞くけど、
薄いのは一君の味覚がどうかしてるから?」

……。

「お二人は本当に仲良しさんですね」

微笑ましそうに笑う千鶴さんのその言葉に、
彼女以外の全員が青ざめた顔をした。

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作者名:reika. | 作成日時:2012年7月5日 20時

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