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十話 ページ16

「ところで、吹雪ちゃんはどうして此処へ?」

「あ……暇だったのでつい。
そろそろこの格好にも慣れたいと考えていたので。
千鶴さん、もしよければ私にも手伝わせてください」

彼女の質問に対して思いつきで発したその言葉。
千鶴さんはそれを聞いて少し不安そうな表情をする。

「え、それは嬉しいんだけど……いいのかな?」

千鶴さんが容易に許可できることではないだろうし、
やはり勝手に部屋を出てきたのは
不味かっただろうか。

半ば諦めて部屋に戻ろうとすると、
意外な言葉が聞こえてきた。

「まあ、此処に居座っているんだから
掃除くらいならいいんじゃない?」

予想もしていなかった彼の提案で、
私たちの表情は一気に明るいものになる。

「君たちは役立たずなんだから、
それくらいでは人並みの役に立ってほしいものだよ」

……一言余計だと思うけど。

彼なりの助け舟なのかもしれないが、
私は小さく悪態を吐いてしまう。

「言われなくてもそうしますよ」

「そうだよね、自分から積極的にならないと。
ただで暮らせるなんて馬鹿なこと考えちゃ駄目だよ」

彼は私の悪態などさも気にしていない様子で
笑顔を浮かべたままだ。

「……安心してください。
此処に置いていただいている以上、
できる限りのことはするつもりですので」

私の反応が意外だったのか、
彼は面白そうに頬を上げる。

「ふぅん……まぁ、僕には関係無いけど。
せいぜい頑張れば?」

――沖田さんは鼻で笑った後、
ひらひらと手を振りながら去っていった。



「……沖田総司さん、か」

いつも笑顔で何を考えているのか全然解らなくて、
けれど人をからかっては面白がっている変な人。

何となくだけれど……性分的に、
彼とはこの先絶対に分かり合えることはないと思う。

気を取り直して、千鶴さんの方を振り返る。

「さてと……私も掃除を始めるとしますか。
千鶴さん、ほうきの場所を教えていただいてもいいですか?」

「うん!」

私はこの後彼女と楽しく会話を挟みながら
庭の掃除に取り組むのだった。

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作者名:reika. | 作成日時:2012年7月5日 20時

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