検索窓
今日:5 hit、昨日:0 hit、合計:137,908 hit

九話 ページ15

ふらっと近くの中庭に出ると、
そこでは千鶴さんがほうきを手に掃除をしていた。

あ、と千鶴さんはこちらに気づいてか、
軽く会釈をしてくれる。

「お掃除ですか?」

私の質問に彼女は小さく頷く。

「私、此処の隊士さんでも何でも無いけど、
ずっと居させていただいてるからできる限りの
ことはやりたくて」

刀もまともに振るえずに家事しかできない
役立たずな邪魔者なんだけどね。
と、千鶴さんはそう言って少し寂しそうに笑った。

「……そんなことありませんよ」

まだ来たばかりの私が言うのもなんだけれど、
千鶴さんの表情が何だか切なくて、
黙っては居られなかった。

「此処に居る皆さんは、千鶴さんのことを
邪魔だなんて思っていないと思います。
千鶴さんは此処に来てしばらく経っているのでしょう?」

再び頷く彼女を見て、私は言葉を続けた。

「普通邪魔なら、追い出されたり、
殺されたりしていると思います。
けれど千鶴さんはずっと此処にいらっしゃる。
皆さんだって受け入れてくれていますよ、
千鶴さんのことを」

「吹雪ちゃん……本当に、それだけなのかな」

千鶴さんは小さく呟いて。

「……うん、そうだよね。ありがとう」

俯いた顔を上げ、少し微笑んでくれた。

彼女の言葉に少し引っ掛かる所があったけれど、
あまり気にしては駄目だと思い私も笑顔を返した。


「へぇ、意外と良いこと言うね、君」


――背後から聞こえた声に慌てて振り返ると、
そこには笑みを浮かべた沖田さんが居た。

「……盗み聞きですか」

冷静を保つように軽く睨んで見せても、
彼は余裕そうな表情のままだ。

「別に、聞かれて困ることじゃないでしょ」

しばらく彼をじっと見つめていると、
死んだ空気を生き返らせてくれたのは
千鶴さんだった。


「……と、ところで、
吹雪ちゃんはどうして此処へ?」

十話→←八話


  • 金 運: ★☆☆☆☆
  • 恋愛運: ★★★☆☆
  • 健康運: ★★★★★
  • 全体運: ★★★☆☆


目次へ作品を作る
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.6/10 (65 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
98人がお気に入り
設定タグ:薄桜鬼 , 花吹雪物語
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:reika. | 作成日時:2012年7月5日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。