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八話 ページ14

「此処だよ」

彼が案内してくれたのは並んでいる二部屋で、
妹は真っ先に、こっちの部屋使ってもいい?
と言って奧の方の部屋に入っていった。

暗い表情の妹に何も言えないまま、
彼女が部屋に入っていく様子を見つめていると、
様子を窺うように藤堂さんが話しかけてくる。

「なぁ。お前と妹、あんまり仲良くねえのか?」

彼がこんな質問をしてくるわけは、
きっと私たちの部屋が別々だからだろう。

「いいえ……」



それはつい先程、
部屋に案内してもらう時のことだった。

妹は近藤さんに私と別々の部屋を使いたいと
申し出たのだ。

一人になりたい、と彼女は言っていた。

近藤さんはあっさり許してくれたけれど……
きっと彼女は。


「確かではありませんが……多分両親のことで、
何も言わずに自分を連れ出した私を
許していないのだと思います」

「……悪い、変なこと訊いちまって」

藤堂さんはばつが悪そうにして
静かに私から視線を外す。

そんな彼に対して、私は首を横に振った。
妹がこのような態度をとるのは、私のせいだ。

……その後、私は藤堂さんにもう一度お礼をして、
妹の隣の部屋の中に入るのだった。




――私達が新選組に預けられて、
早ひと月が経とうとしていた。

「はぁ……」

何度目の溜め息だろうか。
部屋を与えていただいたのは有難いけれど、
とにかくすることが何一つない。

妹は部屋にこもりがちで、
話しかけても滅多に応えてくれない。

仕方がないか、と小さく呟いて、
改めて此処での生活について考える。

新選組の皆さんは決して悪い人たちではない。

毎日のご飯も持ってきてくれるし、
両親のお墓までも作ってくれた。

皆さんとても優しい人だ。
けれど。

「……目が笑っていない」

微笑んでいるのは口元だけ。
私を見る彼らの瞳の奥からは、
張り詰めたような軽蔑の色が感じられた。

逃げる予定などはないが、
まだ信用されてないのだと思う。

最も、いきなりお預かりなんてお荷物だもの。

「勝手に部屋の外に出るんじゃねえぞ」

副長と呼ばれる土方さんはそう言っていたけれど、
ずっと部屋の中に居続ける窮屈さは少々耐えがたいものだった。

また、此処は男所帯であり、
隊士の皆の気を緩ませてしまわないように、
という理由から千鶴さんと同じように私たちにも
男装が強いられた。

「着慣れない物には動いて慣れるしか
方法がないわよね」

それを理由に、私は部屋の近くの、
何処か身近な所を探すことにした。

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作者名:reika. | 作成日時:2012年7月5日 20時

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