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七話 ページ13

「私たちを、ここに置いてください」

近藤さんと呼ばれる男性に対して、
妹は深々と頭を下げたのだ。

「ちょっと待って響希、いきなり何を言い出すの?
皆さん、私たちは本当に大丈夫ですから……」

予想外の出来事に混乱しつつ、
私が訂正するように首を横に振ると、
私の言葉を遮るように妹は私を強く睨む。

「嘘つき」

彼女の目は、悲しみと怒り、そして諦めで
酷く冷めているように見えた。

「お姉ちゃんの嘘つき。
今まで父上と母上に支えられて生活してきたのに、
急に私たちだけでやっていける訳ないよ。
お姉ちゃんいきなり働けるの? 無理でしょう?」

それは、と言葉を濁す私に、妹は続けて言う。

「父上と母上がいない今、
私たちを引き取ってくれる所なんて
此処ぐらいしかないよ。素直に甘えるべきだよ」

想像以上に現実を突きつけてくる妹に、
私は何も言えなくなってしまった。

……そうだ、彼女の言う通り。
私たちを引き取ってくれる所なんて、
もう、何処にもないのだ。

「……わかったわ」

――不安なことが沢山ある。
でも今の私たちはこうするしかないのだ。

改めて近藤さんという男性と向かい合い、
膝を畳んで頭を下げる。

彼はそんな私たちに頭を上げるよう促した後に
よし、と一息つき、凛とした声で言った。

「では彼女たちをこれから新選組預かりとする」

彼の言葉に、部屋に居る全員が小さく頷いた。

「……皆さん、突然で申し訳ありません。
改めまして、花宮吹雪と妹の響希と申します。
これから宜しくお願いします」

私と響希が再び頭を下げると、
眉間に皺を寄せていた男が口を開く。

「しばらくの間、お前たちを新選組預かりとすることは許可する。……が、昨晩の隊士との出来事は他言無用だ。勝手な行動や怪しい行為をした場合、生かしておく訳にはいかねぇ。……それだけは覚えておけ」

昨晩の出来事は他言無用。
そこに微かな引っ掛かりを覚えつつも、
今は自分たちの命を最優先に考えることにした。

「部屋はまだ余っているからな。
藤堂君、案内してくれるか?」

「ああ、わかった」

近藤さんに指名された藤堂と呼ばれる昨晩の男は、
小さく頷いた後に静かに手招きをした。

私たちは軽く会釈してから部屋を出て、
彼の後に続いた。

自分とあまり背丈の変わらない彼の後ろ姿を
見ながら、沈黙に耐える。

静かな廊下をしばらく歩いていると、
彼はふと立ち止まった。

「……此処だよ」

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作者名:reika. | 作成日時:2012年7月5日 20時

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