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序章 ページ1

私の人生を変える大きな出逢いが
訪れたのは、しんしんと雪が
降り続けている真冬のある日だった。


私はあの日、逃げ出した。
愛する家族を見捨て、妹と二人で。

薄暗い京の町を、
ただひたすらに走り続けた。


――つい先程、家の中にいきなり入り込んできた
あの白髪の男たち。
両親は白髪の男たちから
私たちを庇うようにして叫んでいた。

早く逃げろ、と。

私は何も出来ぬまま、その場に立ち尽くしていた。

「血を寄こせ……」

白髪の男たちはぶつぶつと、
そればかり言いながら父と母に襲い掛かる。

……次の瞬間、目の前が真っ暗になった。



そこからの記憶は曖昧だが、
気付けば私は妹の手を引き、
夜の京の町を駆けていた。

「お姉ちゃん、わ、私……っもう走れないよ……!」

背後では妹の響希が息を切らしながら
一生懸命に言葉を吐いていた。

「お姉ちゃ――きゃ!」


少し速すぎただろうか。
響希は石につまずいて転んでしまった。
けれど此処で足を止める訳にはいかないのだ。

早く、あの男たちから逃げなければ……。
追いつかれてしまえばそこで終わりだ。

「大丈夫? あと少しだから我慢できる?」

「う、うん……。それより、父上と母上は?
置いて行っていいの?」

無垢な少女の質問に、言葉が詰まる。

「……行くよ」

今、私が言える事はそれだけだった。

「え、お姉ちゃん、ちょっと待って!」

妹の声を遮るように風をかき分けるようにして
駆けながら、私は頭の中の曖昧な記憶を蘇らせた。


――あの後、一人の白髪の男が
私に襲い掛かろうとした。

「血をよこせえええ!!」

恐怖のあまりに目を瞑り、
痛みに絶える覚悟を決めるが――
いくら経っても、痛みはやって来なかった。

違和感を覚えた私は、ふと目を開ける。
……そこには。

「……父上!!」

そこには、父が居た。
白髪の男が持っている刀は、
父の左胸の辺りに刺さっている。

父はその場に倒れ込んだ。
力が抜け、その場にへたり込んでしまった
私の目の前に母が駆けつけて来る。
そして、何度も何度も父上を呼んだ。

「貴方、貴方! しっかりしてください!」

父からの反応はなく、彼を呼ぶ母の目には、
涙が浮かんでいた。

その背後に――たった今父を襲った白髪の男が
居るなんて知らずに。

「母上、後ろ!!」

母が振り返ったときには――もう手遅れだった。


「やめてーー!!」


白髪の男の刀が母上の身体から
ゆっくりと抜けた後……
母は父の上に倒れた。

序章 →


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作者名:reika. | 作成日時:2012年7月5日 20時

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