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第23録 犠牲と代償 ページ29

中指立てたいのを我慢して押さえ込む。

「あの〜聞いても良いさ?」

『殴られたいか?』

「うっス!何でもありません!!」


ブックマンの隣りに立ち、話し出したAKUMAの方を見る。

どうやらクロスは江戸にいる、そして足手まといになるなら来るなと言うことらしい。

ムカつく言い方、幸い私は怪我をしていない、しかし……

『私だけクロスの所に行く、他は帰った方がいい……そっちの方が私もやり易い』

「な、何を言っているのA……」

ミランダが戸惑う。

『疲労の溜まったミランダ、怪我をしているブックマンとJr.……AKUMAの血をの飲まないとやっていけないクロウリー、リナリーは見るからに重症だろ……死ぬぞお前ら』

「オレらの死が無駄になる」

船員からそんな声が聞こえた。

『だから、犠牲なんだよ……千年伯爵と戦うってことはそう言うことだ、』

「この!」

『イノセンスもない人間が、エクソシストに勝てる訳ないだろ』

殴り掛かってきた男を蹴り飛ばす。

『死にたくないなら中国から出るべきじゃなかったな』


バチンッ


『……?』

まさか、この人に殴られるとは思っていなかった。

いや、殴られるならこの人でないと駄目なんだけど、不意を突かれたようにAが目を丸くしてアニタを見た。

「貴女には、人の心が無いのですか!」

『……私は既に人に在らず、』

アニタの平手打ちを受けたAが、彼女の手を取って心臓のある場所に乗せる。

「っ」

『これが私が払った犠牲(払わされた代償)だ……』

「そん、な……どうしてっ」

膝から崩れるアニタに寄り添い耳打ちした。

『クロスと一部の人しか知らない秘密だよ、冥土の土産に持ってきな。』

「っ、貴女は!」

『私は……エクソシストだ。

優先するのはAKUMAの殲滅、人の救済じゃない』

立ち上がると睨んでくる周りを見渡す、悪者になった気分だ。

否、事実悪者に変わりはない。

「A」

『……はぁ、……リナリーに全部委ねるよ、どうせあの子は立ち止まったりしない、見捨てたりしないよ、お前らの命は彼女みたいなのが繋げてくれるんだ。

私じゃない……』

船の中に入っていった。

『私は、人じゃないからな』

その真意はまだ誰も知らない。



それからリナリーが意識を取り戻し、日本行きが決定した。

『なぁちょめ』

「ちょ?」

『こっからってさ、強いよね?』

「ちょ」

手袋をはめた両手を見る、十字傷が疼いた気がした。



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作者名:名取針子 | 作成日時:2019年4月15日 19時

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