第21録 恋い焦がれる ページ27
『いや、レベル３の能力が消えたんだ。勝った……ということだよな？その内、帰ってくる、筈だ。けど、迎えに行かなきゃ、』
「待ってA、直ぐに光った方向に線路を変えてもらっているから、怪我した所を布で押さえてからにしましょ？ね？」
『ん、あぁ、悪い……』
槍を握り締めてミランダから布を受け取った。
といっても、ほとんど怪我はしていない、十字傷に巻き付けて槍を光があった方向へ向ける。
「リナリー……」
ラビの唇から零れた名前に反応する。
『……』
なんて声を掛けて良いか、彼はエクソシストである前にブックマンだ。そして、彼は割りと情熱的で仲間思い、情の深い男だ。
……ブックマンに皮肉を言うようにはいかない、皮肉がたぶん、凄く刺さると思う。
『あのさ、ラビ……リナリーだけど、うぉッ！？』
不意に立ち上がり、ラビが海に飛び出そうとする、船員達に取り押さえられているが言うことを聞かない。
リナリーがいるのはタイムレコードの範囲外、そして、そこから出ようとするラビにミランダがしがみつき、あなたも仲間でしょ、と訪ねる。
Aが盾の展開を解き、槍を持ってラビの前に立ち塞がる。
『ラビ、ミランダの言う通りだ、感情的になり過ぎだぞ？ブックマンだろ？？それに弾丸』
「うるせぇ！！」
完全にエクソシストだこの顔、Aを片手で突き飛ばし、ラビは伸と唱える。
『っ……待って！私が行、あー……』
言うことを聞かないラビに頭を抱えて、Aはため息を吐いた。これだから若いのは、
『……銃弾受けてんだから、駄目だって言ってんのに、』
「惚れたか？」
『ブックマン……』
ひょこっと、隣にブックマンが現れた。
「アレに惚れると苦労するぞ？まぁ、予言じゃ［本］は生き残る道だと言われているようじゃし、まぁ恋ぐらいなら許してやらんこともない……
もう一人のお前さんが恋するとなると、話は別じゃが、」
私には、もう１つ“ 記憶 ”がある。
三人の男と、クロス……それから鏡に写った“ 誰か ”、私に少し似ているのに色が違う、白い髪に灰褐色の肌、女の私が目を見張るほどのグラマーな身体。
楽しそうな記憶と、酷い記憶、そして淡い恋。
『惚れてはいない！私が一番怪我してないってだけ……行くなら私が行くだけなのに、っていうかあれで本当にブックマン継げんの？』
ハハハ、と乾いた笑いをしながら仁王立ちしているAにブックマンが茶々を入れた。
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作者名：名取針子 | 作成日時：2019年4月15日 19時
