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■閑話 BとEncounter ページ25

〜約二年前・黒の教団〜

「お主」

髪が重力無視した老人に呼び止められた。
団服を着ているからエクソシストであるのが、Aは見た事がなかった。

『え、私?……はい、何か?』

「ハーヴィーの家の者か?」

『え、あっはい……どうかしたんですか?』

「いや、エクソシストになる前は、よくそこでナイフを研いでもらっとったんじゃが、爺さんは元気かの」

『あっ、常連の方ですか?いつもお世話になっています……実家には、たまにしか帰っていないので今の状態はわからないんですが、二ヶ月前は元気でしたよ』

帰っている。正確には逃亡している。なのだが、彼女には関係なかった。

「そうか、それは良かった。自己紹介がまだであったな……ブックマンと呼んでくれ、今は任務で居ないがエクソシストの(せがれ)が一人おる」

『あっ、A・K・ハーヴィーです。ブックマンさん』

「敬称は不要じゃ」

『は、はぁ……』

「……お主、本当にAか?」

『っ、な、んで……そんな、こと……』

Aは焦る、クロス以外に私の中にもう1つ“ 記憶 ”がある事は誰にも言っていない筈だ。
そして、今日は一段と長い夢を見せられ、自分がわからなくなっているなんて、誰にもわからない筈なのに、と……

「なぁに、ブックマンじゃからな……とある一族の影に約30年前に現れたお前さんの事ならよぉく知っておる」

『とある一族?三十年前?』

“ 記憶 ”じゃない自分の中に確かにある何かが、動いた気がした。

「わからんのか?自分が何者で、どうなっていくかは理解しとる訳ではないのか?」

今だって私は、私かどうかわからないでいるのに、この人はワタシを知っている。気味が悪いっ

『知らない、私はっ……私だっ他の誰でもない!』

ブックマンから逃げるようにして食堂に逃げ込む。

「逃げたか……あの感じじゃと、自分が何者かまだ理解してないようじゃな、先は長いか」

しかし、ラビを連れて来なくて正解じゃったな。

あの泣き顔は、ちと美しすぎる。
ブックマンが一人そう呟いた。

『ブックマン、ブックマン……?あっ、あ!!ああ!!!思い出した!糞ムカつく!あのじいさん、あの時の糞爺だ!!』

Aが食堂で騒ぎ出すとソワソワし始めるファインダー達、

誰か何かしたのか?
鬼が泣いてんだけど?
俺何もしてねぇよ!?
ちょっやめろって!

みたいな会話が聞こえるがそれどころじゃなかった。

そうだ。
Aは段々と思い出し始めていた。



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作者名:名取針子 | 作成日時:2019年4月15日 19時

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