第17録 火傷すら怖くない ページ21
『がふっ、……っしの、のめ……!』
Aの顔が火傷だらけで、団服もほとんど無く焦げた臭いがした。
それでも、Aは東雲を大きく振りかぶるとそのまま振り下ろし、火の刃を放つ、AKUMAが消え去ると片膝をついた。
『っ……っ……た、』
「A!」
「触ってはいけません!」
捜索部隊の言葉にリナリーが驚く、
「とにかく服を脱がせます!癒着したら大変だっ」
『AKU、MAは……い、まので、さい、ご…っりな、りーに……きず、を、みせ、る、な……』
「リナリー様は他の捜索部隊に知らせてきてください!」
リナリーは、震えていた。
「リナリー様!」
「は、はいっ」
そして、
リナリーは重症のAを病院に残して一人、教団に帰るとコムイに泣きついた。
「リナリー?わっ!?……リナリー、泣いているのかい?」
それまでに沢山泣いたのであろう、顔が浮腫み、目元が真っ赤に腫れていた。
優しい兄にAが酷い!と騒ぐ。
「A、っひどいのよ?っ私、頑張ったのにっひっく」
「うん、リナリーは良く頑張っているよ」
「足手まといって、ひっく……でも、そうだった、足手まといなの、」
「うん、Aはリナリーより強いからね」
「私っ、私っ悔しいっ」
八つ当たりの憎まれ口を一通り吐いた後、悔しい、と繰り返した。
頼って欲しいと言った直ぐに守られてAは重症で、何をやっているんだろう、と嘆く
コムイは少しだけ後悔した。
まだ十九の彼女にリナリーや神田の事を僕では庇いきれない時、戦場で何かあれば助けて欲しいとお願いした。それを今でも律儀に守ってくれる。
彼女の回復力は神田と似ているが、根本的に違っていた。確かに直ぐに傷は塞がる。
しかし、死なない保証は何処にもない。
「いっぱい修行してやるんだからっAにも負けないくらい、強くなってやるんだからっ」
「うん、一緒に強くなろうリナリー」
「Aなんて嫌いっ」
額を叩いて叱る。
「リナリー、嘘はいけないよ?」
「うぅ〜っ!!好きなの、大好きなのっでも、どうして背中を預けてくれないのっ」
「Aはリナリーが大切だからだよ」
「私だってAが大切よっ」
大切だから、守るのだ。
例えそれが相手の重荷になろうとも。
そして、しばらくしてリナリー率いる部隊が何人も殉職者を出す、
その時Aは、居なかった。
怪我を治したAは、ホームに帰る事無く、そのまま行方をくらませた。
室長室の電話が鳴った。
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作者名:名取針子 | 作成日時:2019年4月15日 19時