第13録 世界＝仲間 ページ17
ギシギシと船が鳴る。
『くっそぉぉぉぉ！！守天！水よ、持ち上がれぇぇぇぇぇぇ！！！』
守天の水を操る力で、船が浮上を始める。
丸腰同然の彼女にAKUMAの弾丸が向かう、しかしそれは彼女の武器によって阻まれた。
槍――風真が独りでに動き出す。
迫り来る弾丸を全て叩き落とした。これは、Aのイノセンスの能力［自動攻撃］だった。
これのお陰で、彼女は小さい頃、家族を失くした八歳の少女は発動したばかりの対AKUMA武器で、AKUMAを倒せたのだ。
『あーあ、ヤになっちゃう……』
リナリーは、無事かなぁ……
背中に嫌な汗が流れた。
足元に千切れた紐が落ちていた。
考えれば考えれるほど、最悪の事しか考え付かない、リナリーがもう少し小さな時にお揃いで買った髪紐、長年愛用していた。
うなじで１つに縛っていた黒く長い髪が頬に掛かる、肘の辺りまで落ち揺れた。
『リナ、リー……？』
顔に掛かった髪の奥に見える彼女の顔は、少し青く見えた。
「
……君は今ちゃんと生きている？
私の［世界］は仲間だけ、
守りたい。
守りたい。
守りたい。
あぁ、そうか、Aも同じなんだ。
昔から自分を犠牲にするAに強く当たってた。
でも、私達を傷付けたくないだけだったんだよね。
私もそう、知ってるのに目を閉じて、甘えてた。
「ごめんね」
ゴポリ、肺から空気が抜ける。
血の繋がりは無いけれど、兄さんと同時期に教団に入ってきて、私の［世界］になってくれて、ずっとずっと側に居てくれたA。
守ってくれたA。
「おねぇちゃん」
Aは私のこと、ちゃんと家族だって思ってくれてる？癇癪を起こす私を本当は、好きじゃないかもしれない。
それでも、あの時、私を守って重症を負ったのは紛れもない事実だった。
アレンくんと昔した会話を思い出す、守りたい。
みんな、を……
あの時、リナリーを守れた自分を誇りに思った。
でも、その事が彼女の重荷になっていた。
彼女にとっては、とてもつらい事だったのだろう……
リナリーが当時十四歳、Aが二十三歳の任務だった。
〜二年前・イギリス〜
門の付近で行き交う人を見ながら腕を組み、左手でペン状の槍を回転させている。
AKUMAなら襲ってくるだろうが、全くその気配がない。
時折チラッとこちらを見る輩がいるが、AKUMAかどうかの判別は付かないので、睨み返す事しか出来ない。
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作者名：名取針子 | 作成日時：2019年4月15日 19時
