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第0録 始めは心を鬼にする事だった ページ2

〜十二年前〜


『げほっげほっ!ぅぐはッッ』

地面を転がり、疲れ果てた身体を仰向けに横たえる。

木刀がAの腹を突き、実の祖父が彼女を見下ろしている。

彼は、それでも動かない彼女に喝を飛ばした。

『AKUMA共を根絶やしにするんじゃねぇのか!?立て!あいつらの死を無駄にする気か!?』

八つの時に殺された家族が脳裏を過る。

十三歳になった今でも、あの時の事は鮮明に覚えている。

私のイノセンスが発動し、それに気付いAKUMA…その弾丸に目の前で撃ち殺された父方の祖父(フェデリコ)
守るように私を包んだ父方の祖母(ミネ)
そのミネを守るように盾になった(朝永)

音を聞き付けて(ミヨ)が悲鳴を上げ私に駆け寄り、
母方の祖母(アイーシャ)がライフルでAKUMAの気を引く、
最後に出てきた母方の祖父・天通(あまつ)が霧散するフェデリコを見ながら被弾した自分の足を切り落とす。

その後の記憶はない、気が付いたらクロスが居て、母方の祖父しか生きてないと告げられた。

『おい!アリサぁ!4番と長船持ってこい』

『はい、マスターッ』

アリサと呼ばれたメイドが戻ると、見たことのない義足と二本の刀を抱えていた。

『Aに水を吹っ掛けてやれ』

『はいっお嬢様失礼します!』

『ンブッ!』

『よし……お前のその腑抜けた実力じゃ死しかねぇ、実践だ。

殺す気でこいや!』

刀が目の前に転がる。それを手にすると同時に、風を切る音がして前髪が落ちた。

『へ?ちょっ、ヒッ!?』

風の音。

天通の腕が動いているのはかろうじて見えるが、全く理解が追い付かず、後ろに下がるしかなかった。

(これ)、本物じゃねぇかよ糞じじい、しかもその義足、今までに見たことねぇよ?』

『A。本気で来い。』

『(居合いにしては、上で、)……ッッッ!?』

一瞬で詰められた間合い、肩から血が吹き出す…

くるりと回転して走り出す、が

『敵に背を向けるんじゃねぇ!』

後ろから飛ぶ怒号に、足が縫い付けられた様に止まった。

『殺しもできねぇで、自惚れてんじゃねぇぞ!あいつらぁ人間に擬態するそうじゃぁねぇか?
鞘に手ぇ掛けてお前の回りを歩いてんだ、牙を向かれる前に殺せ!

先に刀ぁ抜かせるな……

腕が刃だ。

心が鞘だ。

気持ちを研ぎ澄ませ、

耳を研ぎ澄ませ、

全身で刀ぁ振れ!』


毎日、私は祖父と戦った。

人を斬る事に馴れたのは十五になってからだった。


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作者名:名取針子 | 作成日時:2019年4月15日 19時

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