29 『何から何まで元通り』 ページ29
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辿り着いた。
「…………、はぁ、けほっ」
少女は軽く咳き込み、唾を飲み込んだ。心音はいつも通りトクトクといっていて、それが少しだけ大きい気もしたけれど、少女はそれを気にも留めずに足を踏み出した。
──誰かが、何か、してくれたのか。
地面にあれだけ飛び散った血痕も、大破した寺小屋も、まるでそんなことなど無かったかのように元通り──元通りだ。まさに元通り。
寺小屋は無くなっているのだから。
「──」
掠れた言葉が出た。否、言葉ではない��なにか��が出た。
膝が擦れた。地面に膝を着いていた。気づかなかった。気づかなかったけれど、少女は手を着いて、立ち上がった。
「──。墓、か」
寺子屋があったはずの場所の裏に、石があった。大体十つ程だろうか。少女が寺子屋の中で見た子供達の遺体はたしか、九人程だったように思う。これに男性を足せば、十つ。
命の足し算をして、少女はそんな自分を鼻で笑った。
さて、寺子屋にあった遺体はすべて誰かが埋めてくれたのであろう。
ならば、少年は、
「ほんほんほんほん。十人。十人死んだか。うんうんうん、��少ない��犠牲だなァ。まァ十二鬼月の鬼が出たッてェ訳じゃァねェし、十人で済んで良かったかァ」
男の声がした。
お気楽そうな、軽々しい、命を何とも思っていないような声音だ。
少女がそれを聞き咎めたのは、声の主がこの死んだ者達について喋っていたからではない。十人死んだことを��少ない��と言い切ったからではない。
「──お前、今、何つった」
「……うン？ オイオイオイ、そりゃァオレのことかァ？ オレを今呼んだのかァ？」
「お前、今、何つったって言ったんだよ」
隠そうともしない殺気。爆発する寸前のような怒気を孕んだその声に、男は目を細めて邪悪に嗤った。尖った犬歯を剥き出しにし、狂暴に。
対して少女は、もう一度、繰り返す。唇を震わせ、拳を押さえつけ、繰り返す。
「今、��犠牲��って、言ったかよ」
「──」
男は笑みを深めた。少女の殺気を肌で感じ取り、その殺気を真正面から受け止め嘲笑うように唇の端を引き上げた。
「──あァ。
言ったなァ」
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白夜の世界(プロフ) - 内田さん» 応援ホントありがとう御座います……！皆様の心を動かせるような小説を書くために頑張ります！！ (2020年4月15日 17時) (
レス) id: ad65672360 (このIDを非表示/違反報告)
内田(プロフ) - はじめて読ませていただきました！すごく面白くて、少女ちゃんの生い立ち、すごく感動しました。これからも応援させてください！ (2020年4月15日 16時) (レス) id: 2320622f76 (このIDを非表示/違反報告)
燐火 - 成程・・・。私の合作相手もそんな感じですよww (2020年4月14日 12時) (レス) id: 0a3e20f243 (このIDを非表示/違反報告)
白夜の世界(プロフ) - 燐火さん» えぇ、合作はしない主義ですね。自分がパソコンにかじりついていられる時間が非常に不定期ということやその他諸々ありまして……。 (2020年4月12日 8時) (レス) id: ad65672360 (このIDを非表示/違反報告)
燐火 - 白夜の世界さんって合作とかしないんですか？ (2020年4月11日 16時) (レス) id: 0a3e20f243 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：白夜の世界
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nisui03101/
作成日時：2020年3月28日 16時
