第百四十九夜 身空。 ページ45
「……シンドバッド?」
「ん? ……いや、何でもない」
何か欲しいものは? 彼にそう問われるが、今は何も要らない。強いて言うなれば
「隣に居て欲しい」
何処でそんな上手な甘え方を覚えたのかと彼は苦笑する。彼女の隣に腰掛けると、彼女が彼の方へ振り向いて彼の手を握った。
「……近頃、何を考えておるのだ? こんなに側に居て 貴様に触れても……何故だろうか 貴様が隣に居る気がしない。其処に在るのに、何も感じない」
「──!」
彼女は妙に鋭い。普段は殆ど鈍感に近いのに 他人の感情の動きなどは全てに於いて鋭感になる。それがたまらなく心の奥までを読まれている様で 溜まらなく心の奥底からぞくりと何かが込み上げてくる様だ。
「何でもないさ。気にするな」
「お前の中に、影を見た」
どうしたものかと彼が返答に困っていると、彼女の目が急に黄金色へ変化する。彼女は其れを抑えようと目を塞ぎ、枕へ顔を埋めたが いきなり低く呻き始めた。
彼が彼女の肩へ触れると、彼女の身体は熱くなっていて 彼は目を見開く。
「あ゛あ゛あ゛ッ」
その瞬間、彼女の背中を引き裂くような痛みが襲い 大きく翼の紋章が浮かび上がった。
「……!!!?」
「ーッ、〜〜!!」
黄金色の瞳が眩しく発光した瞬間に、彼と彼女以外の全ての時間が止まる。
「どう言うことだ!? A、大丈夫か!」
「大、事……ない」
彼女は瞳を紅と黄金にチカチカと発光させながら答えた。
「……俺にはどういう事なのかさっぱり理解できん」
「そんなの……私、とて……」
彼女の背中に浮かぶ紋章に、彼がキスをひとつ落とす。
「兎に角、何か原因を探してみよう」
彼は扉へ向かって、彼女の側を離れた。それが堪らなく不安で、彼女が声を絞り出そうとした瞬間に 彼女の瞳が再度黄金色に大きく光る。
「ッ!!?」
「う゛ッ」
そして、棚のものが落ちた。力が暴走しているのか 窓硝子が割れ カーテンは裂け 棚のものは落ちて割れて 彼女は目を必死に押さえて屈み込む。
「止まれ、止まれ、止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ!!!」
目を隠した手から涙と思しき液体が流れた。
「落ち着けA!!!」
「あああああああああああ!!!!」
彼女が叫ぶと同時に、彼に向かって割れたガラス片が飛び散る。
「ッ……」
彼の頬を掠めたガラス片には、鮮血が付着していた。
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乙姫(プロフ) - サキさん» 了解です! 有り難う御座います(^^) (2015年6月9日 18時) (レス) id: 28e2e11b2e (このIDを非表示/違反報告)
サキ(プロフ) - 3番がいいです!! (2015年6月9日 16時) (レス) id: 2887baf917 (このIDを非表示/違反報告)
乙姫(プロフ) - ナウシカ@トラ猫さん» わかりました! 有り難う御座います(^^) (2015年6月8日 22時) (レス) id: 28e2e11b2e (このIDを非表示/違反報告)
乙姫(プロフ) - magicさん» 有り難う御座います!頑張ります(`・ω・´) (2015年6月8日 22時) (レス) id: 28e2e11b2e (このIDを非表示/違反報告)
ナウシカ@トラ猫 - 2か4、もしくは両方を合わせてくださるといいです!頑張ってください! (2015年6月8日 22時) (レス) id: 6b074dcab5 (このIDを非表示/違反報告)
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