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第百四夜 最悪。 ページ41

「ぐ……っ!」

 苦しそうにセラフィルが息を吐く。

「先程もメルレムから貫かれたんだ。相当辛いはずであろう」

 だがな、と続けた。彼女は突き刺したセラフィルの剣を何度も何度も抜き差しし、ただただ無表情で血の流れゆく様を見ている。

「貴様を生かすわけにも、そのつもりもない」

 息も絶え絶え彼はAが落としていた彼女の鎖鎌へ手を伸ばすが、その手を彼女の脚が制した。

 彼女に髪を掴まれ、上を向かされる。

「最後だ。 話を聞いてやる。 昔と同じように、返してやろう」
「……っ、情けをかけたつもりかい……」
「──『そんなことないよ、私はただ許せなかっただけだから』」

 彼女は淡々と、そして機械的に答えていった。
 棒読みのその言葉に、セラフィルは苦笑を漏らす。

「……迎えに来るって、約束したのに」
「『私、覚えてなかった。ごめんね』」

 そこでセラフィルの頬を涙が滴った。

「嘘つきは、大嫌いだ……」
「…………ごめんね」

 「ごめんね」と最期に彼女が言った言葉は 今までの機械的な声とは違う。
 震えていて、今にも壊れそうな……彼女の本心だと、確信することができた。

「……もう、いいよ。無理してそんな言葉を使わなくても」
「───そうか。 父上の命などもう存在せんのだろう」

 彼女は突き刺す手を止め 自分の体にも、彼と同じように胸元に剣を突き刺す。
 彼女の口から血液が零れて 床へ飛び散った。ジュダルは目の前の出来事が納得できず、ただそれを見つめるしかできない。

「えっ? A……?」

 彼女は視線をジュダルに向けた後、ふわりと天使のような微笑みを浮かべ、シンドバッドを見た。


 その刹那、Aの瞳が紅から濃い紫へと変わり 黒い光を発する。



 その光はシンドバッド、メルレム、ジュダルを包み 飲み込んだ。

「……姫様……A様!!!?」

 メルレムが目を覚ます。Aは力尽きたのか セラフィルに寄り添うように倒れた。
 そしてメルレムはシンドバッドの方を揺する。

「おいお前!!」
「……ん…………?」
「姫様がっ!!!」

 起き上がった三人の怪我はすっかり治り シンドバッドも軽快に起き上がることができた。
 だが、視線の先には死んでいる様なAの姿があり、すぐに駆け寄る。
 頬に触れるが、反応はなかった。

「A!? A──……っ!!?」

第百五夜 悪化。→←第百三夜 懈怠。



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阿呆代表の神(プロフ) - ジュダルがメルレム?の兄となると、確かですが、ヤンバラの一族ということになりますよね。ジュダルはヤンバラ一族ではありませんよ。辻褄があってないというか……原作と違いすぎてゴチャゴチャになってますよ。 (2020年9月9日 17時) (レス) id: 10eaece567 (このIDを非表示/違反報告)
乙姫(プロフ) - 伯爵王家編は残すところ二話です。伯爵王家編の終了と共に続編へ移行します (2015年4月23日 1時) (レス) id: 28e2e11b2e (このIDを非表示/違反報告)
乙姫(プロフ) - もうすぐ伯爵王家編完結です。まさか三十話にわたり書くことになるとは思いませんでした(;・ω・) あと少しで終わる予定ですので皆様応援よろしくお願いします! (2015年4月19日 21時) (レス) id: 28e2e11b2e (このIDを非表示/違反報告)
乙姫(プロフ) - えるふぃさん» 有難う御座います!頑張ります(`・ω・´) (2015年4月15日 18時) (レス) id: 28e2e11b2e (このIDを非表示/違反報告)
えるふぃ(プロフ) - 乙姫さん» はい!!大丈夫ですよ、ちゃんとわかります!自分の書き方に自信を持ってください!続きが楽しみです♪ (2015年4月15日 17時) (レス) id: d0667a2ad3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:乙姫 | 作者ホームページ:三つもあります←  
作成日時:2015年3月1日 21時

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