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第九十四夜 殺意。 ページ31

「無駄だって。ねえローザ 君もわかるだろう? Aがどれだけお人好しか、そして今更遅いってことくらい」
「わ、私………」

 シンドバッドはセラフィルの持っていた杖を自らの金属器で受け止めていたため、力に限界が来たようだ。

「自分の愛した女も守れないのに、他人の妻を守ろうっての? 凄い神経だね」

 その言葉にシンドバッドは苦虫を噛んだような表情をする。
 そんなやり取りの合間にも彼女の周りは鮮血で汚れていくというのに この場から動けないという状況に シンドバッドは焦っていた。

「早く逃げろ!」
「は………はいっ……!!」

 ローザが慌てて部屋を後にする。

「………君、どうするつもりなの?」
「──おまえ、何故Aの兄と名乗るんだ」
「僕はね、兄じゃない。「義兄」なんだ」

 Aの父親、アンソニーの妹、アルマの息子なんだ。

 彼は杖を下ろし 語り始めた。

「僕の母さんは どうやら相当遊んでたらしいね。まさか兄妹で子供が宿るとは思わないでしょ」
「何………!?」


「僕の母さんの中には……兄の、アンソニーの子供ができたらしいんだ。

 だけど姫が王子と致した、だなんて許されないだろう?
 母さんは直ぐに城を抜け出し 伯爵家に嫁いだ訳さ。
 僕は戸籍上伯爵家の息子になってるけど…父親は同じなんだよ」

 淡々と語るセラフィルを見つめながら、「だからと言って…」とシンドバッドが口を開いた瞬間 セラフィルがシンドバッドに口付けた。気持ちが悪いと目を見開いてセラフィルを見ようとした瞬間、視界が歪む。

「素敵な薬だろう。口に含んでしまったら最後、息を吸った瞬間から体を蝕んでいくんだ。身体中に回ったら、死ぬよ。
 尤も、僕は慣れてるから効かないけどね」

 その言葉も耳に入ってこない。理解ができなくなっている。

「そろそろこの悲劇を終わらせてあげるよ」
「っ………?!」

「まだ一人残ってるだろう」

 セラフィルが瞳を歪めて発した。

「メル、レム………か……!?」

 正解、とセラフィルが言うと、そこで彼の意識も飛んでしまう。

「──僕との約束を覚えてないAなんて要らないんだ。僕が欲しくて焦がれていたのは "あの頃の"Aだったんだから………
 君の周りを、壊してあげる」

 そう言うと シンドバッドの持っていた剣を奪い、彼はメルレムの元へ向かった。

第九十五夜 策略。→←第九十三夜 応戦。



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阿呆代表の神(プロフ) - ジュダルがメルレム?の兄となると、確かですが、ヤンバラの一族ということになりますよね。ジュダルはヤンバラ一族ではありませんよ。辻褄があってないというか……原作と違いすぎてゴチャゴチャになってますよ。 (2020年9月9日 17時) (レス) id: 10eaece567 (このIDを非表示/違反報告)
乙姫(プロフ) - 伯爵王家編は残すところ二話です。伯爵王家編の終了と共に続編へ移行します (2015年4月23日 1時) (レス) id: 28e2e11b2e (このIDを非表示/違反報告)
乙姫(プロフ) - もうすぐ伯爵王家編完結です。まさか三十話にわたり書くことになるとは思いませんでした(;・ω・) あと少しで終わる予定ですので皆様応援よろしくお願いします! (2015年4月19日 21時) (レス) id: 28e2e11b2e (このIDを非表示/違反報告)
乙姫(プロフ) - えるふぃさん» 有難う御座います!頑張ります(`・ω・´) (2015年4月15日 18時) (レス) id: 28e2e11b2e (このIDを非表示/違反報告)
えるふぃ(プロフ) - 乙姫さん» はい!!大丈夫ですよ、ちゃんとわかります!自分の書き方に自信を持ってください!続きが楽しみです♪ (2015年4月15日 17時) (レス) id: d0667a2ad3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:乙姫 | 作者ホームページ:三つもあります←  
作成日時:2015年3月1日 21時

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