第九十二夜 我儘。 ページ29
「ずっと楽しみにしてたよ」
「………」
その言葉にどう返せばよいのか解らずに黙りこくる。彼の瞳を見つめながら無言で口付ければ、彼の腕が背中へ回された。
「ん……」
「………随分積極的だね」
その方が好みだろうと聞けば、彼は微笑みながら彼女をその場に押し倒す。
「──どうだろうね?」
彼女の瞳は何処か宙を見ていた。元よりあまり光を宿さぬ瞳であるが、その双眸は死んだ魚のように濁っている。
首筋に紅い痕がつけられた。
「もう、離さない」
「………離さないで」
彼から口付けようとした時、不意に部屋のドアが開く。
「ローザ……」
「……誰ですか、その女は」
彼が上から退き、Aが立ち上がって衣服を整えた。
「………私は、セラフィルの恋人のA」
「──そう。 私、セラフィル様の妻ですわ」
ローザが微笑みながらこちらへ歩み寄る。差し出された手を握ろうとAが手を伸ばせば、突然ローザがナイフで切りかかってきた。
当然武術も鍛えてきた彼女の事だから咄嗟に避けるも、刃先が頬を掠めて血が流れる。
「……貴女が、セラフィル様を誑かしたのね…………許さない…………!!!!」
ローザが睨み付け、カッと目を見開いた。Aが直ぐに構えをとる。
「………誑かした、か」
「貴女さえいなければ…………っ…」
ローザが降り下ろしたナイフを躱して背後に回り、後ろから腰の辺りに蹴りを入れれば ローザは多少よろけながら彼女て手首を掴んで床に叩き付けた。
「ぐぁ…………っ……」
思っていたよりも強かったローザに、注意を向ける。
「やめてくれ、ローザ」
そこにセラフィルが止めに入った。
「………貴方のせいですわ…」
「──貴様のせいだろう」
二人からの鋭い視線に彼が苦笑いを向ける。
「私は…………ずっと憧れてたのに……貴女のせいよ!!」
「そんなの…………私だって」
(………私だって、ずっとシンドバッドに憧れてて…………やっと、やっと近付けた…はずなのに…)
「貴女を殺すまで気が済まないわ」
「私が死ねば、貴様は七海連合を敵に回すことになるぞ」
彼女も咄嗟に隠し刃で応戦した。
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阿呆代表の神(プロフ) - ジュダルがメルレム?の兄となると、確かですが、ヤンバラの一族ということになりますよね。ジュダルはヤンバラ一族ではありませんよ。辻褄があってないというか……原作と違いすぎてゴチャゴチャになってますよ。 (2020年9月9日 17時) (レス) id: 10eaece567 (このIDを非表示/違反報告)
乙姫(プロフ) - 伯爵王家編は残すところ二話です。伯爵王家編の終了と共に続編へ移行します (2015年4月23日 1時) (レス) id: 28e2e11b2e (このIDを非表示/違反報告)
乙姫(プロフ) - もうすぐ伯爵王家編完結です。まさか三十話にわたり書くことになるとは思いませんでした(;・ω・) あと少しで終わる予定ですので皆様応援よろしくお願いします! (2015年4月19日 21時) (レス) id: 28e2e11b2e (このIDを非表示/違反報告)
乙姫(プロフ) - えるふぃさん» 有難う御座います!頑張ります(`・ω・´) (2015年4月15日 18時) (レス) id: 28e2e11b2e (このIDを非表示/違反報告)
えるふぃ(プロフ) - 乙姫さん» はい!!大丈夫ですよ、ちゃんとわかります!自分の書き方に自信を持ってください!続きが楽しみです♪ (2015年4月15日 17時) (レス) id: d0667a2ad3 (このIDを非表示/違反報告)
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