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第八十夜 愛鬱。 ページ17

(………結局…)

 致してしまった、と彼は裸体のまま疲れて眠ってしまった彼女の身体を抱き締める。
 未だ耳に残る彼女の縋る声に、彼は瞳を伏せながら彼女の額に口づけ 重たくなった瞳を閉じた。



 その朝は、不思議と清々しいもので 隣に眠る彼女の顔を見つめて起きるのを待ち口づける。

「んっ………」
「ん、起きたか? すまん」
「いや……構わん」

 彼女が身体を起こそうとした時、腰が悲鳴をあげたのだろう。小さく呻き声を上げてベッドへ倒れ込んでしまった。急いで彼女の身体を受け止めて大丈夫かと問うと、彼女が無理に笑って見せ 何だか申し訳無い。

「急に痛んだから、驚いただけだ。離せ」

 それに従って ゆっくり手を離した後に彼女が眉を顰めながらも起き上がる。

「………大丈夫か?」
「___一応、生きてる」

 彼女がそう言うと 彼は小さく息を吐きながら床に散らばった彼女の衣服を渡した。

「あんまり無理をするなよ?」
「こんなの平気だ。私の事は構わんから貴様の自由にすればいい」

 彼は衣服を着ると立ち上がり、彼女に「何か飲み物を持ってくる」と伝えて部屋から出ていく。取り残された彼女は痛みを嘆く腰を他所に いつものようにドレスワンピースを羽織り 髪を結い上げた。
 ソファに座って、昨日魔道士が直してくれたドアの方を見る。もしあのときに捕まっていたら、そう考えた瞬間にシンドバッドのことを思い出した。
 もし、彼が捕まっていたら…

「シン…!!」

 痛む腰など気にせずに部屋から飛び出す。色んな人の肩にぶつかり、申し訳ないと思いながらも彼のいる場所を探し、今は金属器も持っているからと遠慮なしに船の中を探し回った。
 ドン、とぶつかったその人物を見上げると、驚いた顔をしたメルレムと、そしてメルレムと会話をしていたであろうシンドバッドがいたため 安心しきったのか膝から崩れる。

「よかった………」
「姫様?」
「俺を探してたのか?」

 丁度その時に、背後をあの男が通った。ぞくりと背中が栗毛立って、振り返り見れば その男と目が合う。

「………っ……」

 メルレムがその男を見ながら口を開いた。

「あの男、伯爵家の奴じゃないか あいつも来るのか」

第八十一夜 連夜。→←第七十九夜 代憐。



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阿呆代表の神(プロフ) - ジュダルがメルレム?の兄となると、確かですが、ヤンバラの一族ということになりますよね。ジュダルはヤンバラ一族ではありませんよ。辻褄があってないというか……原作と違いすぎてゴチャゴチャになってますよ。 (2020年9月9日 17時) (レス) id: 10eaece567 (このIDを非表示/違反報告)
乙姫(プロフ) - 伯爵王家編は残すところ二話です。伯爵王家編の終了と共に続編へ移行します (2015年4月23日 1時) (レス) id: 28e2e11b2e (このIDを非表示/違反報告)
乙姫(プロフ) - もうすぐ伯爵王家編完結です。まさか三十話にわたり書くことになるとは思いませんでした(;・ω・) あと少しで終わる予定ですので皆様応援よろしくお願いします! (2015年4月19日 21時) (レス) id: 28e2e11b2e (このIDを非表示/違反報告)
乙姫(プロフ) - えるふぃさん» 有難う御座います!頑張ります(`・ω・´) (2015年4月15日 18時) (レス) id: 28e2e11b2e (このIDを非表示/違反報告)
えるふぃ(プロフ) - 乙姫さん» はい!!大丈夫ですよ、ちゃんとわかります!自分の書き方に自信を持ってください!続きが楽しみです♪ (2015年4月15日 17時) (レス) id: d0667a2ad3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:乙姫 | 作者ホームページ:三つもあります←  
作成日時:2015年3月1日 21時

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