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第六十四夜 虚構。 ページ33

「………俺も、行っていいか?」

 シンドバッドがメルレムに聞くと彼女は 勿論、と頷くがAが動く気配が全く感じられない。どうしたのかと問えばゆっくりと立ち上がる。意味がわからずに少し戸惑ったが 今は一刻も早く帰らなければならない、とメルレムが必要な荷物は準備するようにと言うと、彼女は歩き出そうとしたが 膝に力が入らないのか少し震えていた。

「姫様………」
「………一人で歩けるか?」

 シンドバッドのその問いに、Aは弱々しく首を横に降る。彼がひょい、と姫抱きにすれば いつもは激しく抵抗するものの 流石に今回はそんな気力もないのかぐったりとしていた。
 彼女の部屋に入り、何を持っていきたいのか聞けば彼女が指差したのは一枚の写真だけだった。

 それは幼い頃に彼女が姉と兄、母と父と共に写っているもので、彼女が唯一持ち歩いているものだ。
 これだけでは流石にまずいだろう、とシンドバッドが彼女の部屋から何か持っていこうと見渡す。
 くいくいと髪の毛を引っ張られてシンドバッドが彼女を見ると彼女が引き出しの四番目を指差して 彼の耳元で「簪」と掠れた声で彼女が囁いた。その言葉に従い、ゆっくりと引き出しの四番目を開け、簪を手に取る。豪華な装飾だったが、彼女がそれを身に付けているのは少なからず一度もない。不思議に思いながら手渡すと、彼女は力の入らないであろう手でゆっくり掴んだ。

「………船は…まだ出ない、か………」

 メルレムが「船は手配してある」と答えると、ホッとしたようにシンドバッドは息を吐く。

「姫様、あと少しで船が着くから落ち着け」

 先程から彼の胸元で泣いているAの肩をぽんと叩くと 彼女の体がぴくりと震えた。抱き締めているシンドバッドは困ったように眉を潜めたが、ひとつの疑問を問い掛ける。

「………おまえ、何で泣いてるんだ?」
「───は?姫様が泣く理由なんて、王様のことしか…」
「親が死んだときは、泣く者は少ないはずだ。大抵は信じられずに怒りが込み上げるか、放心するかだろ?」

 その言葉に、メルレムが「確かにそうだ」と言いたげな表情をする。
 何から泣くのか、というのは彼女の中ではもう様々なことが絡まりすぎて訳がわからなくなっていた。

あ、はい。→←第六十三夜 本気。



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阿呆代表の神(プロフ) - シンドバッドの冒険は漫画のタイトルです。「シンドバッドの冒険書」だと思います。 (2020年9月7日 16時) (レス) id: 10eaece567 (このIDを非表示/違反報告)
阿呆代表の神(プロフ) - これはどちらでもいいと思いますが、態々女子(おなご)と言わなくても、乙女などと言えばいいと思います。いちいちすいません。 (2020年9月7日 16時) (レス) id: 10eaece567 (このIDを非表示/違反報告)
阿呆代表の神(プロフ) - 魔力操作は気のようなもの、空を飛ぶのは…私はよく分からないですが、風魔法辺りかなと思います。詳しく知りたいなら調べましょう。魔導師ならまだしも、魔力操作を使える人でも、魔導師じゃなければ空は飛べませんので、魔導師以外の人が空を飛ぶのは可笑しいです。 (2020年9月7日 15時) (レス) id: 10eaece567 (このIDを非表示/違反報告)
阿呆代表の神(プロフ) - 魔力操作では空を飛べませんよ。飛ぶのは魔法です。 (2020年9月6日 22時) (レス) id: 10eaece567 (このIDを非表示/違反報告)
月影みこと(プロフ) - 質問です。このお話は原作何年前のお話なんでしょう?シンドバッドが19だから10年前ですか? (2016年3月13日 4時) (レス) id: 456fd0dd8b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:乙姫 x他1人 | 作者ホームページ:三つもあります←  
作成日時:2014年10月15日 23時

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