第六十一夜 迷宮。 ページ30
それから五日ほど過ぎた頃。
Aは王宮の中を ピスティに手を引かれて動き回っていた。女友達のできにくいピスティは喜びのあまりに よく彼女を連れ回し、善くも悪くも「友達」という関係までには進展している。
だがAも活発なタイプではあるもののあまり動くのを好まないためこう毎日連れ回されては心身供に疲れ果ててしまうはずだ。実際彼女は最近すぐに息切れする。
「Aたん、王様とは進展した?」
「進展、とは?」
「例えば…こう………結婚の話になったとか…」
「───あー…話はしたな」
少しだけだが。ピスティは可愛らしく瞳をキラキラさせながら「どんな!?」と元気いっぱいに聞いてくる。余計なお世話だ、と一蹴するところだが あまりに期待を込めた目で見てくるので 引き攣った笑みを見せるしかできなかった。
どうなのさー、と切り株に腰掛けながら花を編み興味津々とでもいうように小首を傾げぐいぐいと聞いてくる。
「どんなって………別に」
「えー何それー」
ぷぅ、と頬を膨らませながら脚をじたばたさせるピスティが可愛く、そのあまり彼女は思わずきつく抱き締めてしまった。ピスティは驚いて編んでいた花を落とし「きゃあっ」と何とも女子(おなご)らしい声を上げる。
彼女は年下の女と話すことも早々なかったのでどこか新鮮味があるのだろう。
「お、Aー、話があるんだが……」
「あ、王様だ!Aたん行ってきなよー」
ぐい、と背中を押されて足が縺れ 転びそうになったところをシンドバッドに抱き止められた。
「大丈夫か?」
至近距離で見る整った彼の顔に彼女はどきりとして ただこくこくと頷くしかできず ピスティが後ろでにやりと笑う。
余計なことをするなと叱りたい勢いだが 流石に悪気がないピスティを'シンドバッドの前で'叱るのも何だから、とぐっと息を飲んだ。
「話とは?」
「いやな、近々迷宮攻略にでも行こうかと思うんだ」
は?と彼女が目を点にしながら彼を見つめ、彼も苦笑いが出る。テラスまで歩きながらする会話なのかと彼女は内心思いながらも彼の話を聞いていた。
どうやらどこかの共和国に迷宮が出現したらしく、それを攻略しようと言うのだ。
勿論彼女は行かせたくはない。迷宮の恐ろしさは知っているし、反面シンドバッドの強さも知っている。彼の自叙伝「シンドバッドの冒険」は彼女も長くに亘る城での時間に楽しみにしながら読んでいた。
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阿呆代表の神(プロフ) - シンドバッドの冒険は漫画のタイトルです。「シンドバッドの冒険書」だと思います。 (2020年9月7日 16時) (レス) id: 10eaece567 (このIDを非表示/違反報告)
阿呆代表の神(プロフ) - これはどちらでもいいと思いますが、態々女子(おなご)と言わなくても、乙女などと言えばいいと思います。いちいちすいません。 (2020年9月7日 16時) (レス) id: 10eaece567 (このIDを非表示/違反報告)
阿呆代表の神(プロフ) - 魔力操作は気のようなもの、空を飛ぶのは…私はよく分からないですが、風魔法辺りかなと思います。詳しく知りたいなら調べましょう。魔導師ならまだしも、魔力操作を使える人でも、魔導師じゃなければ空は飛べませんので、魔導師以外の人が空を飛ぶのは可笑しいです。 (2020年9月7日 15時) (レス) id: 10eaece567 (このIDを非表示/違反報告)
阿呆代表の神(プロフ) - 魔力操作では空を飛べませんよ。飛ぶのは魔法です。 (2020年9月6日 22時) (レス) id: 10eaece567 (このIDを非表示/違反報告)
月影みこと(プロフ) - 質問です。このお話は原作何年前のお話なんでしょう?シンドバッドが19だから10年前ですか? (2016年3月13日 4時) (レス) id: 456fd0dd8b (このIDを非表示/違反報告)
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