第六十夜 証明。 ページ29
「………シン?顔色が悪いですよ」
政務の途中にジャーファルに声をかけられてシンドバッドがゆっくり顔を上げた。
「………おまえ、メルレムに手を出したろ」
「───は?」
「………は?」
**
「どうした 姫様 顔色 悪い」
父親への手紙を書きながら先程のことを考えていると、メルレムが心配そうに覗き込んでくる。
要因を作っているのはメルレムなのだが。
「………おまえ、ジャーファル殿と……致したのだろ?」
「───え?」
「………え?」
────
───
──
─
昨晩。
『………メルレムさん、まだ眠れそうにないですか?』
『………当分 無理』
二人でベッドに腰掛けながら会話していると、急に窓がガンガンと音を立てた。驚いた彼女は勢いで彼の胸へ飛び付いてしまいあまりの恥ずかしさに動けずにいると 彼が頭をぽんと撫でてきて、妙な安心感を与えられる。
『にゃーあ』
『………猫ですよ』
『!猫………?!』
そう言って彼の胸元からがばりと起き上がり、彼の方を真顔で見つめた。特に意味はない。
ジャーファルが窓をがらりと開ければ猫がジャーファルの胸へ飛び込む。
『可愛いですよね、猫って』
『………見た目は』
『触ってみますか?』
『引っ掛かれたことしかない』
そう言った瞬間やはり猫に引っ掛かれた。
『いったあアアァアァアアァア!!何するおまえ まだ触れてすらないぞ!』
『にゃーあ』
『こンの……猫被りいいいっ!!だから嫌いなんだッ』
彼女が猫を恨みの籠った瞳で見下すと、猫が下から飛び掛かってきたためサッと横に避けて猫が顔から床へ落下する。
『ざまあみろ』
『フーッ!!』
今度は脚を引っ掻こうとされたため魔力操作で空中を飛んだ。猫が頭をベッドの端にぶつける。
『何でこいつ 僕に突っ掛かる 困る』
『猫と遊ぶの初めてなんですか?馴れれば可愛らしく見えますよ』
『全ッ然可愛くない』
その猫のせいでその晩は眠ることなど到底不可能だった。
───
──
─
「………ということなんですが」
「───ああ……」
「………なんだ 夜中まで起きてたから怒られると思った ごめん 寝たのは猫」
「………いや、いい………………」
誤解は解けたものの、シンドバッドとAはどこか疲れたように机の上に頭を突っ伏した。
だが、すっかりジャーファルとメルレムは仲が良くなったそうだ。
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阿呆代表の神(プロフ) - シンドバッドの冒険は漫画のタイトルです。「シンドバッドの冒険書」だと思います。 (2020年9月7日 16時) (レス) id: 10eaece567 (このIDを非表示/違反報告)
阿呆代表の神(プロフ) - これはどちらでもいいと思いますが、態々女子(おなご)と言わなくても、乙女などと言えばいいと思います。いちいちすいません。 (2020年9月7日 16時) (レス) id: 10eaece567 (このIDを非表示/違反報告)
阿呆代表の神(プロフ) - 魔力操作は気のようなもの、空を飛ぶのは…私はよく分からないですが、風魔法辺りかなと思います。詳しく知りたいなら調べましょう。魔導師ならまだしも、魔力操作を使える人でも、魔導師じゃなければ空は飛べませんので、魔導師以外の人が空を飛ぶのは可笑しいです。 (2020年9月7日 15時) (レス) id: 10eaece567 (このIDを非表示/違反報告)
阿呆代表の神(プロフ) - 魔力操作では空を飛べませんよ。飛ぶのは魔法です。 (2020年9月6日 22時) (レス) id: 10eaece567 (このIDを非表示/違反報告)
月影みこと(プロフ) - 質問です。このお話は原作何年前のお話なんでしょう?シンドバッドが19だから10年前ですか? (2016年3月13日 4時) (レス) id: 456fd0dd8b (このIDを非表示/違反報告)
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