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「土方さん、お松さんが来ましたぜィ。」
彼女がここに来てからどれほどの時間が経ったかは分からないが
何度も何度も十四郎と彼女のしょうもないような口喧嘩を宥めた退がすっかり疲れきった頃、
そんな言葉とともに障子が開かれ、幼さの残る顔立ちの栗毛の少年がひょっこりと姿を現した。
一番組隊長・沖田 総悟である。
それを聞いた途端に彼女の顔がパッと明るくなった。
「あ、おい!待て!!」
そのまま十四郎の制止などには耳も貸さず、勢いよく部屋を飛び出す。
「松さんっ!!」
そして、嬉々として着物姿の美しい女性に走り寄った。
「もう、あなたは!今度はなにをしたのです?」
長く美しい総悟に似た栗色の髪。
透明感のある血色のいい肌。
温かな眼差しを持つ大きな瞳。
そして、柔らかな物腰。
彼女とは大違いの大人の女性だ。
この女性は、問題児である彼女の面倒をみながら江戸で最も人気の団子屋を切り盛りする女主人である。
総悟も見廻りをサボってよく訪れていた。
「土方様、沖田様。それに、山崎様。毎度毎度、ご迷惑をお掛けして申し訳ございません。」
お松さん、と呼ばれた女性は深く頭を下げると
「つまらないものですが…」と、紙袋を総悟に手渡す。
「いえ、こいつぁ受け取れやせんよ」
苦笑しながら珍しく総悟が遠慮し、それをやんわりと断った。
それもそのはず。
ほぼ毎日のように彼女は何かをやらかし
ほぼ毎日のように真選組に拘束され
ほぼ毎日のように松はこうして
店の売り物である団子も持って
ほぼ毎日のように謝罪に来るのだ。
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いぬ(プロフ) - 大好きです!いや、もう本当に好きです。日向ちゃんの性格が可愛すぎるっ!これからも頑張って下さい! (2020年12月17日 6時) (レス) id: daed22b7fd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:吉良 x他1人 | 作成日時:2015年1月9日 18時