第53話 ページ3
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忍ばせていたナイフを手に取り出し、
一気に奴の首元へ突きつける。
さっきまで扉の前にいた俺が、いつの間にか自分の傍でナイフを握りしめている姿にエルヴィンは目を大きく見開いたまま口を開けていた
だらしねぇ面しやがって…
「最後にもう一度聞いてやる…Aは何処だ」
「…ハハハッ…驚いたな、やはりお前はこちら側に来るべきだ」
「そんなこと聞いてんじゃねぇよ、答えねぇならこのまま首を切り落とすが…」
「私が死ねば彼女の居場所を知ることも出来ず、人類の未来もなくなるぞ」
「人類なんざ知るか」
グッとナイフを持つ手に力を入れると、奴の首から細い血が流れていく。だが、奴は笑ったまま逃げようともしない
「そんなに私を殺したいのなら、殺せばいい」
「……」
「だが、私を殺したらお前が調査兵団の団長になるんだ」
「またお得意の冗談か?ますます気に食わねぇな」
「どこに逃げようが必ずお前を見つけ出す」
「ッ…」
その目は力強く恐怖すら感じた。
一瞬の戸惑いと覚悟の薄れが後悔を生む。突然、扉が大きく開かれ銃を構えた数人の兵士が入ってきた
「ナイフを捨てろ、お前が死んだら悲しむ人は少なくはないだろう?」
「クソがッ…」
ナイフを机の上に刺し込み、さっさと兵士の間を通り抜け胸糞悪い建物を後にした。
結局なにも手掛かりがないままじゃねぇか…
これじゃあエレンに合わせる顔がねぇ
完全に俺の責任だ、もっと警戒していれば…
ちゃんと俺が正直で居れば……
早くエルヴィンを殺していれば、
………
「そうですか」
「…悪かった」
奴のことを話すとエレンはため息さえも吐かず、
冷静に一言だけ呟いた。
「もう仕方ねぇから謝罪はいいです。俺の方でも探してみますから、何かあったら連絡下さい」
「あぁ、分かった…」
「それから…」
エレンの目に光はない。表向きには許しているようにしているが、俺を恨んでいるのが分かる
「貴方は予定通り結婚してください」
「は?」
「Aの性格知ってんだろ?アイツはまた自分のせいで…アンタが幸せになれなかったって知ったらきっと自分を許せねぇと思うから…」
「……そりゃ、どうだろうな」
俺が結婚したって、しなくたって、
俺は幸せになれねぇだろう。
お前が好きだから、お前が幸せじゃなきゃ
永遠に俺は幸せじゃない
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ゆかり(プロフ) - 途中からずっと泣いてましたwwはてなさんの作品読ませてもらってとても感動しました。ほんとにありがとうございます。 (2021年5月23日 21時) (レス) id: 927c3428d3 (このIDを非表示/違反報告)
はてな(?)(プロフ) - さき。さん» ご観覧、ご感想ありがとうございます。感動して頂けて凄く嬉しいです!私も、さき。様の言葉に泣きました…。本当にありがとうございます。 (2021年4月15日 18時) (レス) id: 2bed4e8e7b (このIDを非表示/違反報告)
さき。(プロフ) - すごく好きです…!悲しく、苦しい恋もありながら、とても綺麗な終わり方で…思わず泣きました…。こんな素晴らしい作品に出会えたことを嬉しく思います!!! (2021年3月9日 23時) (レス) id: bc9aead4c2 (このIDを非表示/違反報告)
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