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今日も変わらず。 side・K ページ16

「…とまあ、こんな感じで。あの子はいまだに、メカクシ団には入ってくれないんだよね」
少し長い語りを終えてキサラギちゃんを見ると、妙な笑みを浮かべていた。
アイドルの時の輝くような笑顔じゃない。これはあれだ、少々込み入った世間話をしている奥様方の顔だ。
要するににやにやしていた彼女は、
「よーく分かりましたよ、ふふふ…」
なんてもはやアイドル失格な笑い方をしていて、正直不気味だったし心配になった。
つい一歩下がってしまった僕へ一歩、否、二歩分距離を詰めると、がっしと僕の両手を掴む。
「…えっとキサラギちゃん。近いし痛いよ?君の握力どうなってるの?ほんとに女子高生?これはキドといい勝負なんじゃないかな、うん。…ね」

「つまりカノさんは、ハヅキさんに一目惚れしたんですねっ!」

「えお願い、そろそろ離して…って、え?」
「第一印象は『綺麗な子』で、ちゃっかり家まで送る役になってるじゃないですか。今日だって、二人で遊園地に来ちゃって。つまりそういうことでしょう?」
「違うよ!?」
またまたぁ、なんて笑う。そういえばこの子、頭の回転という面で非常に頼りにならない上に天性の壊滅的なセンスを持ち合わせていたんだった。まともに話が伝わるわけもない。
「本当にそんなのじゃないってば!だからその、つまり…」
「カノさんが言葉に詰まるなんて珍しいですね?これはやっぱり…」
「違うって!」

「ーそのくらいにしてやれ、キサラギ」

涼やかで凛とした低めの声。
聞きなれたその声が、割と本気で天からの救いに思えた。
腕を組んだキドは呆れ返った顔をしていたけど、ふと口角をあげ、キサラギちゃんに囁いた。
「…いいか?キサラギ。こいつはこの手の話題に不馴れなんだ。いざという時の弱点は残した方が面白いだろう?」
「ちょっと、キド?」
「それもそうですね!」
「キサラギちゃん?」
僕の感動を返してほしい。
華やかな雰囲気の女の子達…の中に、黒髪の姿がない事に気づき、首を傾げる。
「ねえ。ハヅキちゃんは?」
キドはああ、と呟いて、ガラス工芸、などがあるらしい土産物のお店を指した。
「待っているのも面倒だし、もういい、とさ」
「…ああもう」
急ぎ足で向かう。
面倒と言うか、飽きたのだろう。それならいっそ一人で回ればいいかと。
今日も変わらず、横暴なまでに…そして淡々と、自由な子だった。

真っ青な。→←妹。 side・H



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ユキ(プロフ) - 最終更新日から4年ちょっと過ぎてしまっていますが、この続きを書いて頂けませんか?どうかよろしくお願いいたします! (2022年2月19日 22時) (レス) id: 710a3a49b7 (このIDを非表示/違反報告)
霜奈(プロフ) - 酒牙亜さん» コメントありがとうございます!こんな…もはや『恋愛』なのか『サスペンス(?)』なのか分からないようなものなのに…本当にありがとうございます!頑張ります! (2017年9月4日 17時) (レス) id: 2732718bb3 (このIDを非表示/違反報告)
酒牙亜 - 更新頑張ってくださーい!待ってますから!(*´ω`*) (2017年9月4日 16時) (レス) id: d72b2da870 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:霜奈 | 作成日時:2017年5月15日 15時

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