【イナイレ】どうか幸せに。3【佐久間次郎】 (ページ23)

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23.　お人好し3(佐久間視点) ページ23

俺の言葉にAは自嘲的に笑う。

「なんだよ、バケモンだとでも思われてたっての？」

「化け物か…そうだな。不動もAも俺達になんか興味ないんだって思ってたんだ。
　だが…俺達がお前たち二人にもう少し向き合っていればまた違っていたのかもしれないな。」

Aは何も言わなかった。

ただ俯いて何かを考えているようだった。

化け物とまではいかないかもしれないが、俺たちが2人に対して少なからず恐怖心を抱いていたのは事実だ。

そもそもこの世界大会がなければ2人に対する誤解は解けていなかっただろう。

……特に不動に対しては。

「だから、今まで知ろうとしなかった分今日は沢山2人の事を教えてほしい。」

俺の言葉に驚いたように顔を上げる。

「……ん、分かった、いいぜ。」

照れているのか口元を手で隠す。

あざといくらい可愛らしいしぐさをしながらすこし頬を赤らめ頷いた。

思わずこちらも照れくさくなり赤くなってしまう。

気持ちを落ち着かせるようにごほんと咳払いをした。

「あぁ、ありがとう。
　そうだなまずは――――、」

・

・

それから幼少期の話を色々と聞いた。

母も父もおらず、引き取られた家では世話をされず頼れるのは兄だけ。

とてもじゃないが良い環境とはいえない辛くて苦しいものだった。

だがAはニコニコと楽しそうに不動の話をする。

その姿を見ていると辛い話を聞いていてもどこか癒された。

それに――――、

「なぜ真帝国の時にあんなに不動にべったりだったのか分かった気がするよ。
　辛い時でも嬉しい時でもいつだって不動は傍にいてくれたんだな。」

「うん、兄ちゃんはいつも私の先を行って沢山の事を教えてくれたんだ。
　私が馬鹿な事した時だって虐められた時だってずっと。」

真剣に、兄の大切さを嚙みしめるようにそう言った。

船内に目的に着いたというアナウンスが聞こえ、

ただでさえざわざわとしていた船内が一層騒がしくなる。

「ん、着いたみたいだし私らも降りようぜ。」

Aは一足先に席を立った。

「その役割を俺も担うことが出来たら……。」

Aの背中にぽつりとつぶやいた。