手裏剣 ページ42
影羽とカナンを頭に思い浮かべると、自分でも驚くほどにすらすらと言葉が出てきた。
一通り話し終え改めて向き直ると、忍くんは目にうっすらと涙を浮かべていた。
ヤバい、地雷でも踏んだ……？
学院生を泣かせただなんて、地雷を踏んだ脚でなく、最悪首が吹っ飛ぶことになるかもしれない。ここで罷免になったら僕はどうなるんだ。
伝えたい事を全て伝えられた満足感から一転、焦燥が溢れ出てきた。必死に己がした発言をなぞる。
どれだ、どの発言が彼を傷付けたんだ。
額に汗が滲む。
笑顔を張り付けたまま一人焦っていると、忍くんが口を開いた。
「感動したでござる……！」
？？？
「拙者、悩んでいたのが馬鹿らしく思えてきたでござるよ」
忍くんは実に晴々とした表情で頷いていた。窓から降り注ぐやわらかな光が彼を包みこんだ。
どうやら機嫌を損ねてしまったわけではないようだ。
「一人で話しすぎてしまったかと反省していたところだったんだけれど……参考になったのなら嬉しいな」
僕は胸を撫で下ろした。
今回も無事に解決できて良かった。
「今、とっても救われた気持ちでござる」
忍くんが溜まった大粒の涙をハンカチで拭った。
手にしていたのは手裏剣柄のハンカチだった。
「それ！シュリケンって言うんだろう？僕、日本文化に興味があってね」
「……そうでござる！忍者の武器で、流星と呼ぶこともあるんでござるよ」
「へえ、初めて聞いたな。忍くんが所属する流星隊にぴったりだね」
確かによく見ると星のような形である。これを流星と呼ぶだなんて昔の日本人の想像力と表現力は賞賛に値する。なんて美しい感性だ。
「えへへ、嬉しいでござる……！」
入室後と打って変わってくるくると変わる表情で彼の喜びが伝わってくるようだ。
えへへって何だよ可愛いな。
「あ、ゴム製のレプリカで良ければあるでござる！」
思い出したようにブレザーの内ポケットを探り、光沢の無い手裏剣を取り出した。僕の興味ありげな顔を確認した後、
「こう構えて……こうでござる！」
パイプ椅子から立ち上がり、格好よく手裏剣を構えて壁に向かって投てきした。回転しながら投げられたそれは、ポーンと軽く跳ね返されて落ちた。
「格好いい……素晴らしいよ！僕にも一度貸してくれるかい？」
「勿論でござる！」
手裏剣を受け取り、僕も見よう見まねで投げてみた。何だこれ楽しい。
「上手いでござる！ジゼルさんも忍者同好会に入ってほしいくらいでござる」
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流離いのsecret(プロフ) - ぎゃぁぁ本当だ……！ご指摘ありがとうございます！ 細かいところまで読んでいただき嬉しいばかりです笑 (今後気を付けます笑) (2019年7月13日 22時) (
レス) id: 451ca50573 (このIDを非表示/違反報告)
しか - ごめんなさい。｢混沌｣でした!! (2019年7月13日 21時) (レス) id: 3bc0209618 (このIDを非表示/違反報告)
しか - ｢悩み｣の話の｢敬人｣が｢敬斗｣になってますよ（コソッ面白かったです。これからも頑張ってください！ (2019年7月13日 20時) (レス) id: 3bc0209618 (このIDを非表示/違反報告)
流離いのsecret(プロフ) - ありがとうございます！頑張ります！(語彙力ない)笑 (2019年6月24日 14時) (レス) id: 451ca50573 (このIDを非表示/違反報告)
ゆん - 面白いです(語彙力ない) (2019年6月23日 21時) (レス) id: 19c16fa711 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：流離いのsecret | 作成日時：2019年5月2日 14時
