休日: 朝 ページ36
土曜日午前5時30分起床。
起きるつもりは全くなかった。
設定を変え忘れたジリリと鳴る置き時計を、起き抜けの目で睨み付ける。
僕が働いていた病院の休診日は日曜と木曜午後だけ。土曜は出勤日だったのだ。
だが、また二度寝する気も起きなかった。
みんなが起きるまで静かに時間を潰そうか。
本棚に保管したまま読む機会のなかった新しい医学書を手に取り、7時まで読み耽っていた。
隣の部屋から徐々に生活音が聞こえるようになり、本を閉じた。それまで気が付かなかったが、僕の脚にヴィルクルスが巻き付いていた。
「ああ、ごめんね、集中していたものだから」
謝罪の意を込め、ひとつ頭を撫でてあげた。
ヴィルクルスは満足したのか、するすると床に戻って行く。
「さて、ご飯にしようか。おいで」
僕は立ち上がり、シークの部屋とは逆サイドにある部屋へ向かった。
そこは基本的に僕が薬を調合する時に使う部屋だった。空調はバッチリ。カーテンも黒く厚めのものを。徹底して管理しなければ危険な液体数品もあった。だから、弟妹には絶対に入ってはいけない部屋と教えている。
この部屋に入ったら、怖〜い怪物に喰い殺されるよ、と言い聞かせて。
調合台の隣にあるスチール製の棚の最上段から飼育ケースを下ろし、その中で生かしているネズミを一匹取り出す。
この子が今日のヴィルクルスの餌だ。
生きたままあげても良いのだけれど、狩猟本能は目覚めさせても弟の蜘蛛と蠍が襲われる恐れが出てくるだけなので、死にたてほやほやのネズミを与える事にしている。
僕はネズミの頭を押さえつけ、病院から拝借したメスで脊椎を一思いに掻き切った。
可哀想に。
自分よりも大きなものに蹂躙される恐怖。
せめて天国へ。胸の前で十字を切る。
「はい、お待たせ」
僕の手に伏せたネズミをヴィルクルスに差し出す。餌を丸飲みにする様子を穏やかな心地で見ていた。
「ああ、君たちにもあげないとね」
ネットで購入したネズミの餌を与える。
「美味しいかい？」
チューチューと高い声で返事している。愛らしいものだ。
別に、ネズミが憎くて殺しているわけではない。ヴィルクルスをより深く愛しているだけ。ネズミも一動物として可愛がっているつもりだ。
まあ、結局僕の手で息の根を止めるわけだから名前は付けていないが。
「殺すために生かすなんて、人間って怖いね」
ケースの蓋を閉め、また棚の最上段に置く。
「さ、行こうかヴィルクルス」
ネズミを背に、リビングへ降りていった。
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流離いのsecret(プロフ) - ぎゃぁぁ本当だ……！ご指摘ありがとうございます！ 細かいところまで読んでいただき嬉しいばかりです笑 (今後気を付けます笑) (2019年7月13日 22時) (
レス) id: 451ca50573 (このIDを非表示/違反報告)
しか - ごめんなさい。｢混沌｣でした!! (2019年7月13日 21時) (レス) id: 3bc0209618 (このIDを非表示/違反報告)
しか - ｢悩み｣の話の｢敬人｣が｢敬斗｣になってますよ（コソッ面白かったです。これからも頑張ってください！ (2019年7月13日 20時) (レス) id: 3bc0209618 (このIDを非表示/違反報告)
流離いのsecret(プロフ) - ありがとうございます！頑張ります！(語彙力ない)笑 (2019年6月24日 14時) (レス) id: 451ca50573 (このIDを非表示/違反報告)
ゆん - 面白いです(語彙力ない) (2019年6月23日 21時) (レス) id: 19c16fa711 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：流離いのsecret | 作成日時：2019年5月2日 14時
