37.涙腺 ページ38
「努力すれば叶う」なんていう決まり文句のようなものがある。
そんなのは全く嘘で、全てが報われる筈なんて無い。
本人がどれだけ努力したって、叶わないものはあるのだ。
私は、完全に憔悴していた。
無二の親友を差し置いてしまった私に与えられたのは、それに等しい代償。
彼女の想いにも気づかずに、最後まで自分の事しか頭に入っていなかったのだ。
目元が熱くて、眩暈がする。
ギラギラと照り輝く太陽は、惰弱な者を照らすスポットライト。
オレンジ色の空間に残されたものは、ひとつも無い。
これから、立ち上がって家に帰らなければ。
頭では思っていても、身体は言う事を聞いてくれない。
あぁ、いつまで泣いているつもり?
全ては、私の行いがもたらしたもの。
全てを諦めれば、きっと楽になれるのかな。
そんな事を思いながら、ぼうっと天井を眺めていた。
「何してるの?」
不意に、教室に響いたその声。
それはきっと、幻でも何でもない。
「ねぇ…一ノ瀬さん?」
ゆっくりと。
ゆっくりと声のした方向を向くと、そこには練習着を着た成宮くん。
教室の扉から私を見ているその目は、太陽の光に反射されて煌びやかに輝いている。
時が止まったかのように、彼は動かずにそこに立っていた。
なんで、なんでそこに。
視界がゆらゆらと揺れて、たちまち目の前は透明な雫で溢れかえる。
それは頬を伝い、点となって滴った。
ー
‥彼女の涙を見たのは、これが初めてだった。
教室に忘れ物をしたのに気がついたのは、日が落ちる寸前の時間帯。
練習が終わったらすっかり忘れてしまっていそうだから、直ぐに取りに行こうと思って教室まで走って行ったんだ。
教室に入ろうとした時に目に飛び込んできたのは、無機質な空間に居る彼女。
彼女はゆっくりと俺を見て、驚いたように僅かに目を見開いた。
見開かれた目からは、次々と涙が零れて行く。
「なんでここに‥‥」
涙を呑んで喉が痛いのか、震える声で尋ねられる。
「‥‥ちょっと忘れ物」
目を逸らして、机の中に手を突っ込んだ。
案の定忘れ物とやらはそこにあった。
それに安堵して息を吐いたけれども、心に突っかかるものはまだ取れない。
彼女は、どうして泣いている?
「なんで‥‥泣いてるの」
「‥‥」
伏せ目がちに俯く彼女は、嗚咽を漏らしながらも話そうとはしない。
‥いや、話そうとしないのではない。
「もう‥‥夢も何もかも全部、諦める」
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希望(プロフ) - コジパンさん» ありがとうございます、全く更新出来てなくてごめんなさい|ω・`) (2015年7月1日 16時) (レス) id: b0e2c90b13 (このIDを非表示/違反報告)
コジパン - 頑張ってください (2015年7月1日 6時) (レス) id: abdad3be03 (このIDを非表示/違反報告)
希望(プロフ) - コジパンさん» ありがとうございます!ちゃんと鳴ちゃんおちなので大丈夫ですよ!物語の展開はここからです(´∀`*) (2015年5月3日 18時) (レス) id: b0e2c90b13 (このIDを非表示/違反報告)
コジパン - え・・・鳴違う子の方にいっちゃうの↓ すいません鳴大好きなものでして、いつも楽しみにしています! 続き楽しみです。頑張ってください! (2015年5月3日 18時) (レス) id: abdad3be03 (このIDを非表示/違反報告)
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