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36.訣別 ページ37

「私は…どちらかを捨てる事なんて出来ない」


これが、私の出した答えだった。


南弥ちゃんがどれだけ大切でも、自分の夢を捨てる事は出来ない。

自分の夢がどれだけ大切でも、大切な親友を捨てる事は出来ない。


だから、そう。


「…」


彼女の目は、ゆっくりと細められた。
その瞳は確実に私を捉えていて、潤んでいる。


「私は…ずっと、あきの中の1番にはなれないんだね…」


彼女の失望したかのような声色が響き渡った。
彼女が大きな声を出した訳ではない。

重くのしかかるような感じがする。私の心に、その言葉が突き刺さった。


「南弥…ちゃ…」

「もういい。分かったから…」


違う。南弥ちゃんを見捨てようとした訳じゃない。

本人にそれを伝えたいけれども、その願望以上に重い何かが言葉を出す事を許さない。


鞄を持った彼女は、ゆっくりと私から目を逸らして背中を向ける。


それはほんの数秒の出来事。

だけど私からしてみたら、スローモーションのように感じる。


きっと南弥ちゃんは、これからずっと私と関わる事はないのだろう。

大した根拠の無い予想が、少しずつ残酷に頭を浸していく。


ドアの前で立ち止まって、背中を向けたまま彼女は言う。


「本当は…あきの夢が大嫌いだった」


その一言で、凍りつく体と真っ白になる頭。

彼女は、隠し持っていた毒を全てさらけ出して行く。



いつも夢の事しか考えてなくて、私の事なんてどうでも良いのかなって思った。

大して言葉を知っている訳でもないあきが、なんでそこまで執着するんだろうって。


夢が邪魔で邪魔で仕方が無くて、諦めれば良いのにってずっと思ってた。


実際、夢に対して中途半端な思いしか持っていなかったのに…。

羽島さんの為にって言ってたけど、それは只の理由付けに過ぎない。

何も感じられないから、あきの夢は嫌い。



毒を受けた私はただ、彼女の背中を見るだけ。


「…だけど、あきと一緒に居られて楽しかった」


振り向いた南弥ちゃんは、最後に私の知っている笑顔を見せた。


「さよなら、親友」


悲しいのか、惜しんでいるのか。
南弥ちゃんの頬に一筋、涙が零れた。


南弥ちゃんは、太陽の光に消えて見えなくなった。


あぁ、そうかと私は気が付く。
もう二度と、戻れないんだね。



南弥ちゃんに会う事は無いんだね。

最後まで何も告げずに、貴方は居なくなってしまうんだね。



堪えていた涙が、堰を切ったように溢れ出た。

37.涙腺→←35.爆発



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希望(プロフ) - コジパンさん» ありがとうございます、全く更新出来てなくてごめんなさい|ω・`) (2015年7月1日 16時) (レス) id: b0e2c90b13 (このIDを非表示/違反報告)
コジパン - 頑張ってください (2015年7月1日 6時) (レス) id: abdad3be03 (このIDを非表示/違反報告)
希望(プロフ) - コジパンさん» ありがとうございます!ちゃんと鳴ちゃんおちなので大丈夫ですよ!物語の展開はここからです(´∀`*) (2015年5月3日 18時) (レス) id: b0e2c90b13 (このIDを非表示/違反報告)
コジパン - え・・・鳴違う子の方にいっちゃうの↓   すいません鳴大好きなものでして、いつも楽しみにしています! 続き楽しみです。頑張ってください! (2015年5月3日 18時) (レス) id: abdad3be03 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:希望 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2015年3月26日 9時

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