35.爆発 ページ36
「妹さんと何か…あったの？」
南弥ちゃんの目元は、僅かだか赤く腫れている。
いつしか彼女が言っていた事がふと頭を過ぎって、恐る恐る訊いてみた。
ゆっくりと彼女を見ると、彼女は。
「…っ」
鳥肌が立った。
目の前に立つ南弥ちゃんの形相は、同じ彼女とは思えないほど豹変していた。
「嫌…やだ…あいつなんて」
「何があったの？！ねぇ！南弥ちゃん！」
無意識だった。
私は、恐怖の余り叫んでいた。
「あんな妹、消えちまえばいいのに！！」
顔をめちゃくちゃに掻きむしり、ぎゅっと目を瞑る彼女。
左手だけ折られていないワイシャツの裾がずり下がった。
それを見た瞬間、私は悟った。
そこにあったのは、創傷。
そこから伝わってくるのは、南弥ちゃんが何も言わなかった南弥ちゃんの全て。
彼女は1人で抱え込んで、自分の心を傷つけ続けていたのだ。
「なんで…南弥ちゃ…」
言いかけて、手で口を覆った。
違う。
そこに居るのは、南弥ちゃんじゃない。
南弥ちゃんの姿をした、全く違う人格。
「あんな奴なんて…」
悔しそうに歯を食いしばる南弥ちゃんに、言える言葉なんて何も無かった。
ただそこに立つことしか出来ない。
不甲斐ない私に、一体何が出来るのだろうか。
私が出来たのは、「やめて」と懇願する事だけだった。
沈黙。重苦しさ。
そんな空気が、教室の空間全体を満たす。
時間は止まる事無く流れているのに、私達2人だけ時が止まっているのだろうか。
酷く息苦しくて、心が抉られているかのようだ。
『互い』が『互い』の目に『互い』を映し出す。
しかし私の目が映し出す南弥ちゃんは、私の知っている南弥ちゃんではない。
南弥ちゃんの目に映る私は…私？
「…あき」
穏やかな声色で、南弥ちゃんが口を開いた。
一見、いつもの彼女に見えるだろう。
それも違った。
空っぽの眼差しを持つ彼女ではない。
いつもあの瞳は輝いていて、生きていた。
彼女は、助けを求めるかのように私に言う。
「ねぇ…私とあきの夢…どっちが大事？」
嘘だと思う程優美な微笑みを湛えて、彼女は私に問い詰めた。
「もしもどちらかを失うなら…あきはどっちを守る？」
「何…それ」
「どちらかを殺すとしたら、どっちを殺す？」
彼女から発せられた言葉一つひとつが、どんなものよりも重みを持って襲いかかってくる。
大切なものを両方天秤にかけるなんて、私には。
「…私は」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 66人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「アニメ」関連の作品
焔 は 水 に 惹 か れ ゆ く 。 01【鋼の錬金術師】
捜査一課の黒羽さん 7【名探偵コナン】
捜査一課の黒羽さん 10【名探偵コナン/100万ドルの五稜星】
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
希望(プロフ) - コジパンさん» ありがとうございます、全く更新出来てなくてごめんなさい|ω･`) (2015年7月1日 16時) (
レス) id: b0e2c90b13 (このIDを非表示/違反報告)
コジパン - 頑張ってください (2015年7月1日 6時) (レス) id: abdad3be03 (このIDを非表示/違反報告)
希望(プロフ) - コジパンさん» ありがとうございます！ちゃんと鳴ちゃんおちなので大丈夫ですよ！物語の展開はここからです(´∀｀*) (2015年5月3日 18時) (レス) id: b0e2c90b13 (このIDを非表示/違反報告)
コジパン - え・・・鳴違う子の方にいっちゃうの↓ すいません鳴大好きなものでして、いつも楽しみにしています！ 続き楽しみです。頑張ってください！ (2015年5月3日 18時) (レス) id: abdad3be03 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
