約束のブルーローズ【成宮鳴】 (ページ18)

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17.残念ページ18

「どっどどどどぉ！！どうしたの？！」

家に帰ると、さらが悲惨な顔をして飛んできた。

「ちょっと疲れただけだよ…ただいま」

「病弱少女ですか？！それはそれでか弱くてイイですな！」

「…」

そんな変わらぬ妹の横をすり抜けて、自分の部屋に戻った。

2人分程の面積であるため、自分の部屋というより『さらも一緒の部屋』だ。

そのため、毎日のようにイケメン話(さら命名)を聞かせられる。

今日も。

「それでね！目が青くて綺麗な人が居たの！そんなイケメンじゃないけどイケメンっぽい人！！」

「そ、そうなんだ…」

「『俺は一般ピーポーだぜ！』って言ってて超かっこよかった！！！」

熱く語る妹の手には、1枚の写真のようなもの。

「…で、それは？」

「貰った！」

さらが写真をひらりと見せる。
そこに映っていたのは。

「…京華ちゃん？」

「そう！その話で盛り上がったの！！」

もうこんな調子の妹に、つっこむ元気もない。

その『一般ピーポーさん』と京華ちゃん。一体どんな関係なのか。

いよいよ相関図が訳の分からないことになってきた。

まず、初対面の人とそんな変な話が出来るものなの？

「この…パーカーにショートパンツとニーハイ！絶対領域よいぞよいぞ！！」

さらは写真をまじまじと眺めては、涎を垂らしている。

写真の中の京華ちゃんは、風になびく青髪を片手で抑えている。

それさえも綺麗で、羨ましく感じる。

そしてこの子、初対面の人と初日でカラオケに行くような子だよ…。

本当にいらん特徴だよ…。
姉の私が恥ずかしくなるよ…。

「お風呂…先に頂くね」

「あ、うん」

ー

湯船に浮かんだ愛らしいアヒル。

悲しいような、何なのか分からないこの感情。

なんでこんなに泣きたいと思う自分が居るの？
なんで悲しいと思ってるの？

「うぅっ…く…」

涙が溢れてくる。

分からない。分からないよ。

なんで…。

鏡に映し出された自分。

とても悲しそうな顔をしている。

その面に手を当てて、呟いた。

「ただ憧れてただけだから…」

だから、違う。

絶対に。

そして気がついた。

最初は、頑張っている姿を遠くからそっと眺めていたいだけだった。

だけどそれがいつからか、余計な欲に変わってしまっていた。

それに気がついて、自分を愚かだと感じた。

明日、明後日は休日。
だからしっかり引き締めなくちゃ。

愚かな心は捨てなくちゃ。

アヒルは悲しげに揺蕩った。