思いは時に呪いとなる 六 ページ48
「ま、まさか私たちの神社だったなんて……」
阿音は冷や汗を流し顔を引きつらせる。
「神社が取り壊されてるんだったら、もうどうしようもねーな」
「いえ、まだ一つだけ方法はありますよ」
銀時が頭を掻いて言うが百音が否定した。
「解除はできなくても、まじないを上から封じる呪法を施すことはできます」
「その場合、完璧にまじないをなくすことはできないけどね」
ただ、と阿音は苦い顔で補足を口にする。
「Aのそのまじないはかなり強すぎるから、封じるにはそれより強い力で押さえつけないといけないわ」
「この間みたいに球に五芒星を描いて簡単にできるものでは抑えきれません。神社でちゃんとした儀式を施す必要があります」
「神社は借りるアテがあるけど……封じ込めに必要なものがあってね」
「必要なもの……?」
「対象を強く想う人たちの願いの力、願力が必要なの」
阿音は銀時たちに封印の呪法の説明をした。
Aのまじないは六芒星の印が刻まれている。
普通、六芒星には魔除けの効果があるといわれている。
それが今、Aの中のアルタナと彼女の強い怨念の影響で悪作用を引き起こしていた。
印を封じ込めるには六芒星の六つの角に、封じ込める相手を想う願力を込める必要があった。
「一人で複数の角に込めることも可能だけど……Aのまじないの験力の強さを見るに、たぶんそんなことしたら魂が持ってかれるわ」
「こわっ!誰だよ、そのまじないをかけるの手伝った神社の奴!」
まじないをかけるにも、
つまり神社の誰かがAのまじないにOKサインを出して協力したことになるが、その人物は、人の魂を吸い取るほどの験力をまじないに加えている。
「たぶん私たちの親だろうけど、全然覚えてないわ」
阿音は昔を思い出すが、子供がそんな大それた儀式をしている所など見た記憶はなかった。
それは百音も同じである。
「まァ思いの強さによっては巫の予想に反してこっちが逆に力を吸い取られることもあるから。その巫もこうなることは予想外だったんじゃないかしら」
儀式の仲介をする巫は基本的に験力をコントロールできる。
しかし儀式対象の願いが強すぎると、まれに巫の意に反して、儀式対象に勝手に験力を持っていかれてしまうことがあった。
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作者名:刹那*桜 | 作成日時:2022年10月2日 5時