やっぱりヒロインはゴリラに限る 十一 ページ13
夕方になり、銀時と星海坊主は二人して、えいりあんの死骸に立ちションしながら話をしていた。
星海坊主はすっかり頭部に毛がなくなり、ぼやく。
「この腕は俺にとっちゃ、戒めなのかも知れねーよ」
星海坊主は左腕は元から義手だったらしく、左腕の残った部分を押さえていう。
「こいつァ、
「!」
「神楽じゃねーぞ。上にもう一人いてな」
星海坊主は目を伏せてもう一人の子を思い浮かべた。
その子は夜兎の血を忠実に受け継いでいる、戦闘本能の塊のような人物だという。
遥か昔に夜兎族には、親を超えて一人前な「親殺し」という習わしがあった。
いつの間にか消えたその古い習わしを、もう一人の子は実践しようとした。
「天下の星海坊主の首を、殺ろうとしやがった。夜兎ってのはそういう種族だ……その時に俺は、ガキを止めるでもなく本気で息子を殺そうとしてる俺の血に、気づいちまったんだよ」
「神楽が止めなければ確実に殺していた。あん時の俺を見る奴の目は忘れられねー」
泣きながら父の脚にしがみついて止める幼い神楽が、脳裏に浮かんでくる。
それ以来、星海坊主は幼い神楽と病気の母を置いて逃げてしまい、家に寄り付かなくなった。
神楽もいつかそうなるのではないか、その時に自分の獣を抑えられるか、不安に襲われていたらしい。
「神楽に同じ思いはさせまいとここまできちまったが」
――神楽のことは信じてやってくれよ。
銀時に言われた言葉を思い出し、星海坊主は一つ息をつく。
「俺は神楽をなに一つ信じちゃいなかったんだな。俺と神楽は違う……アイツは……アイツは俺なんかよりずっと強い奴だよ」
父親失格だ、と嘆く星海坊主に銀時は手紙を手渡した。
「なんかいっつもコソコソ書いてたぜ」
星海坊主は住所不定だからか、いつも家に返されてきていたみたいだが。
「渡す機会があるかもって内緒で全部押し入れにとってあるが……今はこれしかねーや」
銀時は立ち上がって背を向ける。
「じゃーな」
「!オイ!」
「細けーことはよくわからねーや。けど自分を想ってくれる親がいて、他に何がいるよ」
銀時は背を向けながらフッと笑う。
「俺ァ、欲しかったよ。アンタみてーな家族が」
「お前……」
「だからよォ……
去っていく銀時の後ろで、高台の下で座り込んでいた神楽は涙を流していた。
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作者名:刹那*桜 | 作成日時:2022年10月2日 5時