困ったときは笑っとけ笑っとけ 六 ページ8
『……そーか。お前がおりゃあ面白か漁になると思っちょったんだがの〜』
数年前、坂本は宇宙への旅に銀時を誘った。
『こう見えても
首にマフラーを巻いた銀時は、少し笑みを浮かべて言う。
『確かにの〜。Aと離れるんは、わしも寂しいき』
『アイツも誘わなかったのか?』
『かる〜く誘ったけんど、断られてしもうての』
――宇宙旅行か〜。綺麗な空を見れるのは確かにいいね……でも私は、ここにある宝物をそばで見ていたいからっ。
にっこり笑うAを思い出して坂本は口角を上げる。
『そーか……ま、Aがここに残るってんなら俺が見といてやるから安心しとけ』
『わしも宇宙から見ちょるけど、頼んだぜよ……おんしゃはこれからどーするがか?』
『俺か? そーさな……俺ァ、Aとのんびり釣りして、地べた落っこちちまった流れ星でも釣りあげてもっぺん
風にマフラーを揺らされて、銀時は坂本に笑っていた。
坂本は身を砂に沈めて昔のことを思い出す。
――まったく、何考えちょるんだか分からん男よ。
じゃがおんしがいたから、わしゃ宙に行けた。
おんしが地上に残ってくれたから、わしゃ後ろを振り返らずに走って来れたんじゃ。
ーーお前がいたから、大事な人を預けられた。
『坂本君が宇宙に行ったら、 帰ってきたとき色んな旅の話してほしー。この戦争が終わったら、銀ちゃんたちと皆で宇宙の船旅に出てみたいな』
――A、わしはその旅の船舵を取りたいぜよ。
――お前の笑顔の為ならわしは、何でもするき。
沈む坂本の目の前に手が差し出される。
その手の主、銀時は息を止めて頬を膨らましながら坂本に手を伸ばした。
しかしその銀時までも飲まれそうになって、彼は慌てて片方の手で出口を掴んだ。
銀時は必死で体を支えつつ手を伸ばしていたが、力に負けて中に引き摺り込まれてしまう。
流される銀時の足を、Aが掴んで出口に引っ張った。
『!!』
坂本も銀時も、彼女がくるとは思っていなかったのか驚いていた。
銀時は彼女に引っ張ってもらいながら、坂本へ手を伸ばす。
Aも銀時を支えながら、坂本に手を伸ばした。
――銀時、A……わしが地に落ちる時が来ても、お前達がまた釣り上げてくれるっちゅーなら
――わしゃ何度でも飛ぶぞ。あの宙にの。
坂本は両手を広げて、二人の手を掴んだ。
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作者名:刹那*桜 | 作成日時:2022年8月29日 18時