今の世の中は血の繋がりがなくたって家族を名乗れるものらしい 三 ページ22
「だが三郎はどうして……」
先ほど砲口を下ろした三郎を不思議に思ってそちらを見る。
「……オ……親父」
「!!」
先ほどまで黙っていた三郎が、言葉を発し始めた。
「油マミレニナッテ……楽シソーニ……カラクリ……テル……アンタ……好キダッタ」
途切れ途切れだがそれは確かに、彼の息子が昔、父にかけた言葉だった。
「……なんだってんだよ。どいつもこいつも」
源外は床に崩れて言葉を吐き捨てる。
「いったい俺にどーやって生きてけっていうんだよ。どうしろってんだ!」
「さーな……長生きすりゃいいんじゃねーのか」
銀時は夜空の星を眺めてそう返した。
――
祭りからしばらくして、町には源外の似顔絵つきの指名手配書が貼られていた。
高杉は笠で顔を隠し煙管を咥えて、その紙を眺める。
「どうやら失敗したよーだな」
「!」
横から桂が声をかけた。
彼も笠で顔を隠しており、僧侶の格好をしている。
「思わぬ邪魔が入ってな。牙なんぞとうに失くしたと思っていたが」
「人は誰でも何かを護るためなら牙を剥く。お前はそれがないに等しいただの獣だが……お前も『たった一人』のためならば何があろうと鋭い牙を見せるだろう」
誰とは明確に言わないが、桂は高杉に指摘した。
「……獣でけっこう。俺が護るものはアイツだけで十分だ。それ以外は必要ねェ」
高杉は桂に背を向けて歩いていく。
不敵に笑って、言葉を続けた。
「俺ァ、獣の呻きが止むまで全てを壊す。それで俺の大事な女に手を出す奴が現れるなら、そいつを地獄に落とすだけのことだ」
「……」
桂が無言でその場に留まっていると、下から男の子がイチャモンをつけてきた。
足元には何やら小さなカラクリのオモチャが落ちていて。
「あー、あんま触んじゃねーよ! お前それ買えよコノヤロー」
「!」
源外の大きな声がそばで聞こえる。
彼は外に軽い店を構えて楽しげにカラクリのおもちゃを見せていた。
「フン……なかなかいい
桂はその場を去ろうとするが
「源外さん! これちょーだいっ」
聞き慣れた声がして足を止めて振り返る。
源外の店でAが子供に混じって、楽しそうにしてオモチャを眺めていた。
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作者名:刹那*桜 | 作成日時:2022年8月29日 18時