渇いた兎は星に願う 四 ページ28
「んー、これでもダメか」
神威は固まってしまったAに残念そうに呟く。
「やっぱり反射的に『本能』が出るものじゃないと動かないのかな。たとえば……」
彼はAの腕を離して地を踏み込んだ。
次に神威がいたのは、新八の背後だった。
『!!新八ィィィィ!!」
全員が新八の方に駆けようとする。
そして新八自身も、危機に本能が身を守ろうとした。
しかしそれよりも速く、
神威の手は新八の心臓をーー
パァン!と衝撃音が響いて
血がボタボタと大量にこぼれ落ちる。
「なっ……」
新八が振り返って目に入ったのは
自分の目の前で、神威の左手に腹を貫かれているAだった。
「Aさ……」
Aは、うつむいて表情が見えないが、ゆっくりと手を動かし神威の左腕を掴む。
そして、圧倒的な力で彼の腕をへし折った。
「ッ!!」
骨折音が鳴り響き、神威は痛みに目を開く。
手を引き抜いて一歩後ろに下がった。
手を抜かれた瞬間にAの傷は治っていく。
腕を折られたというのに、神威は笑っていた。
「クク……やっぱり、それがキミの『本能』なんだね」
汗を流しながらも、興奮醒めやらぬといった様子で。
「
神威が話している間にAが間合いを詰めて殴り掛かってきた。
彼は折られた左腕を垂らしながらも、すぐさま拳を避けてAに蹴りを入れる。
神威の蹴りをAが避ける瞬間、髪に隠れた目が見えた。
その赤い瞳は黒い殺意を帯びて、禍々しく中で何かが蠢いている。
その目を見て神威は口角を上げた。
「やっぱりそうだ。君が本当に輝く場所はーー
降りかかる彼女の拳を避ければ、空振りした衝撃波が空気を押し出して建物の柱や壁を粉砕していく。
神威が彼女の攻撃を受け止め押し流す度、重く大きな打撃音と衝撃音が鳴り響いた。
「戦っていれば分かるよ。本気で殺そうと思えば垣間見える、君の中のその鬼がコッチを見てる」
兎は渇望していた。
ぬるま湯に浸かる鬼が牙を剥くのを。
兎は渇望していた。
その鬼に相対して血湧き肉躍る死の宴を。
「止めろ団長ォォ!!」
ひたすら打撃音と破壊音が響く中に、阿伏兎の声が割って入ってくる。
しかし神威は彼を気にせず、楽しそうに戦い続けていた。
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刹那*桜(プロフ) - ひゅーまんさん» すみません!一回誤変換して全部そのまま変換し続けていましたね。全て修正いたしました!ありがとうございます! (4月8日 22時) (レス) id: f89dd253f0 (このIDを非表示/違反報告)
ひゅーまん - すみません 星海坊主の字間違えてますよ? (4月7日 20時) (レス) @page42 id: 5c08d5ef79 (このIDを非表示/違反報告)
刹那*桜(プロフ) - 庵さん» ありがとうございます!!レギュラーのオリキャラを慕っていただけて何よりです! (2023年2月20日 2時) (レス) id: f89dd253f0 (このIDを非表示/違反報告)
庵(プロフ) - 戦くん好きすぎる!!!!お話の作り方がお上手で一気に読んでしまった!更新楽しみにしています(◍ ´꒳` ◍ (2023年2月17日 3時) (レス) @page49 id: 58741a08e8 (このIDを非表示/違反報告)
刹那*桜(プロフ) - ハルマ(元Luma/瑶真)さん» コメントありがとうございます!楽しんでいただけて何よりです!( ´ ` *) (2023年2月13日 17時) (レス) id: f89dd253f0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:刹那*桜 | 作成日時:2023年2月4日 21時