検索窓
今日:1 hit、昨日:1 hit、合計:46,176 hit

第46話 ページ48

「・・・くそッ!!」


女性らしくない悪態をついて、Aが訓練室の壁を殴る。


その表情には、焦燥と憎悪の色が滲んでいた。


「なんで越えられない!?私とあいつの、どこが違うっていうんだ!!」


切り刻まれた仮想トリオン兵の山を背に、心の内を思い切り吐き出す。


何か見えないものに目がけてぶつけるかのように、何度も、何度も。


幸いその様子はモニターには映し出されておらず、Aの異変に気づく者もいない。


・・・いない、はずだった。


「そんなに自分を痛めつけて、なにが楽しいんだ?」


勢いよく入り口のほうへ振り向くと、そこには見覚えのある狙撃手が立っていた。


狙撃手は呆れたようにそう言うと、一歩、また一歩とAに歩み寄る。


「人には誰しも越えられない壁というものがある。


 それはいくら足掻こうが、決して登ることすら叶わぬ壁だ。


 今のAにとっては、あの人がその“壁”だったと、それだけの話だろう」


狙撃手の言葉がAの心に突き刺さる。


その言葉は何もかもが的を射ていて、そして何もかもが今のAの行動を批判していた。


「・・・たとえ越えられない壁だったとしても、乗り越えなきゃいけない。


 だって、あいつは・・・」


「まぁ待て」


それ以上は言うべきではないと狙撃手が制する。


Aはその動作で我に返ったのか、一度深呼吸をし、薄く笑った。


「・・・ありがとう。なんか、頭に血が上ってたみたい」


「どういたしまして。熱は冷めたみたいだな」


「うん。もう大丈夫」


「そうか。それなら・・・」


狙撃手はそう言うと同時にAの襟首をむんずと掴み、入り口のほうへ引きずっていく。


「え、ちょ、何」


ずるずると連行されていくAは、訳が分からないといった表情を浮かべた。


「ちょ・・・ちょっと紗夜?どこ行くの?」


焦り気味なAの問いかけに、狙撃手・・・紗夜はゆっくりと振り向いて答える。


その額に浮かんでいるのは、青筋。


「決まっているだろう、隊室だ」


Aの襟首を掴む手にいっそう力が入る。


紗夜は視線を逸らさずに、怒りのオーラを放ちながら言葉を続けた。


「あれだけ好き勝手してくれたからな。今度という今度はもう逃がさん。


 書類が全て片付くまで、タイムアタックも模擬戦も禁止だ」


それは有無を言わさぬ笑顔の圧力。


Aはもう逃げられないと悟ったのか、「・・・はい」と呟いて大人しくなった。

第47話→←第45話


ラッキーアイテム

革ベルト

ラッキーナンバー

8

ラッキー方角

西 - この方角に福があるはずです


目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (26 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
47人がお気に入り
設定タグ:ワールドトリガー , 迅悠一   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:シロナ | 作成日時:2015年7月20日 10時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。