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「中学を卒業して、お前にはプロ転向の話が来ていた。
だがお前は王座奪還のため立海の部長としての道だけを選びそしてそれを真っ当した。
スポンサーはもちろん、ドイツやアメリカからも声をかけてもらっているのだろう?
にも関わらず、お前は大学に行くと言う。
俺にはそれがわからない」
この男は根本的にずれているように思う。
まるで立海としての優勝にしか興味がないというように。
手塚や跡部は貪欲にプロとしての頂点を目指している。
彼らにはそれだけの才能や実力がある。
だが精市も同じように、優れた選手なのだ。
俺が今まで出会った中で間違いなく、1番の選手。
それなのに、何故、これほどまでに欲がないのか。
俺には少しも理解できない。
「全く興味がないわけじゃないさ。
正直いい話はたくさん貰ったし、考えてもいる。
でも俺は今、自分が1番したいことをしていたい。
今が永遠じゃないからこそ、今を大切にしたい」
言っているのが精市でなければ綺麗過ぎておそらく笑ってしまうような台詞。
だが俺には少しの笑みも浮かばず、整い過ぎているその横顔をじっと見つめた。
哀しそうだ、なんて抽象的な言葉は使いたくないが、その横顔に何故かそう思った。
「それは今日のクレープやこの間の海と関係があるのか?」
「ふふっ、蓮二には敵わないなぁ」
精市はわかり辛いが、わかりやすくもある。
器用そうに見えて不器用で、根本的に理解することはやはり難しい。
だが、あいつ…Aを見る目が他とは違うことくらいならわかる。
明らかに穏やかで優しく、柔らかく、そして哀しい瞳をしているのだから。
精市とAが付き合っていないことには薄々感づいていたが、別れたと聞いた時に何かあったのかと思ったが2人の関係性は変わらず、元々友達でしかなかったのだろえう。
だがそれでも幸村は……。
「お前は2つ大切なものがあったらどうする?
どちらかを選んでどちらかを捨てるか、どちらも選ばず現状維持を図るか」
人に答えを求めるなど、俺自身が驚くほどにおかしなことだ。
何故なら全ては計算式で解き明かせると思っていたから。
だがこの世には電卓を使っても、公式に当てはめても答えがでない問題がたくさんあるのだ。
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SHINO(プロフ) - スノウさん» スノウ様!いつもコメントありがとうございます。スノウ様のコメントは本当に何度も読み返してはニヤけてしまって、とても力をいただいています。そうですね、私も主人公の気持ちをやっと書けたので嬉しいです。笑 どうか最後までお付き合いください。 (2017年4月20日 15時) (レス) id: cc409903fa (このIDを非表示/違反報告)
SHINO(プロフ) - 雪さん» ありがとうございます。気をつけている事に気付いてくださって嬉しいです。fifthの表紙もありがとうございました。申請を出したので使わせていただきます!これからどのような展開になるかは秘密ですが、楽しんでいただけると嬉しいです。ありがとうございます。 (2017年4月20日 15時) (レス) id: cc409903fa (このIDを非表示/違反報告)
スノウ - おつかれさまです!ついに主人公ちゃんから好き、という素直な気持ちが聞けて嬉しいのと同時に、これから彼女がどのように生きていくのか、不安なような楽しみなような。続編待ってます(^^*) (2017年4月18日 23時) (レス) id: 9bbfe87ee5 (このIDを非表示/違反報告)
雪 - お疲れ様です。続編も楽しみにしています。SHINOさんの花火を空が泣くと表現するところや、情景は目に浮かぶのに感情は明かさないようにするところとか本当に好きです。これからも頑張ってください。 (2017年4月18日 20時) (レス) id: 41f82b2237 (このIDを非表示/違反報告)
SHINO(プロフ) - Yさん» コメントありがとうございます!儚さは私の意識している点でもあるのでとても嬉しいです。終わりを残念だと感じていただけるような作品をかけてよかったです。ですが、まだ終わりそうもないので引き続きお付き合いください。笑 応援、本当にありがとうございます。 (2017年4月16日 16時) (レス) id: cc409903fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:SHINO | 作成日時:2016年9月8日 17時