はむ・ハム・チェリー 3

93 K side お先です 2 ページ24

おとといの夜 も･･･



藤ヶ谷は 俺を《ヒロ》と 呼んだ。

俺の熱い頬を
ひんやり薄べったい手の平で 挟んで。

俯きそになる 俺の顔を
しっかり 自分に向けて固定して。

俺を《ヒロ》･･･て呼んだんだわ。






『ずっと ･･･ 前から･･･ す き。
いち ば ん。』







俺に 勘違いさせたのかって
謝ってたっけ。

ま、半分はアタリで
半分はハズレってとこ だな。



《ヒロ》と《ひろみつ》が繋がんねーほど
俺も バカじゃねぇっての。

そんでも･･･

ハムの俺に 向けられる
アイツの 蕩けそな 優しい眼差しは
俺が ハムの《ヒロ》だからなんじゃねーか。


なんて な。

そんな どうしようもねぇ
後ろ向きな気持ちが 湧いてたのは
アイツの 独りよがりな 呼び方のせい･･･
だとも 思ってる。



俺は。

《ヒロ》だけども･･･《ヒロ》じゃねぇ。


そんな あやふやなココロの迷いを
アイツに ぶちまけた。

ぶちまけちまったら･･･
胸ん中が スッキリ軽くなった。

アイツの《好き》が
スンナリ 真っ直ぐ胸に入ってくんだわ。

恥ずかしいくらい 真っ直ぐな《好き》が。



.






「ヒロ、こっち。まだ しんどいでしょ？」


バンの 後部座席で
俺のアタマを 肩に引き寄せる 藤ヶ谷。

運転席の宮田も、助手席の たま も
《プラベ》に含まれてるらしい。



「じゃ、行くよ？」

ニヤニヤ ハンドル握る 宮田を無視して
寄せられたまんま アタマを倒してたら
動きだした バンが すぐに止まった。


「けーこさん！ 凌くん！」


宮田が 開けたんだろ。

自動で下がる スモークガラスの隙間から
けーこさんと、抱き上げられた 凌くんが
顔を突っ込んできた。


「みっくん、熱は？ もう大丈夫なん？
帰ったって聞いとったのに。 」

そういや 氷枕を けーこさんに借りたって
コイツが 言ってたのを思い出す。


「あ、すんません、心配かけて。
も 大丈夫なんすけど･･」

「氷枕、ありがとうございました。
お礼もナシで スミマセン。
おかげで 北山、良くなりましたし。

また来たい･･･です。
今度は 仕事ヌキで ゆっくり。」


俺の肩に 覆いかぶさってくる
藤ヶ谷の顎。


「凌くん、また 遊ぼうな。」

「んっ、あそぼ ね、
またね、だっこね《ヒロ》っ！」


俺が差し出した手を ギュッて握ったあと
泣きべその ちっちゃな 手のひらが
窓から スルリと抜けてった。



「凌くん 、 《ヒロ》って･･･」

「あ。チビには 分かんのかね。」


俺 = 《ヒロ》って。

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