はむ・ハム・チェリー 3

94 F side フルマラソン ページ25

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･･･ ガ チャ




重たい金属の音が
俺の背中を あと押しする。

閉まったドアに 後ろ手に カギを掛けて
スニーカーを脱いだばかりの
屈んだ 小さな背中に 覆いかぶさる。


「おわっ！？ ふ、ふじ･･」

「たいすけ。」


ショートブーツを
足で踏んづけて 脱ぎ捨てながら
グラつく背中を くるりと回せば
デニムのキャップが 廊下に転がり落ちて。

「あ･･･ た い･･むんｯ//」


驚いた口から つむぎ出される
リクエストのコトバが 待ちきれなくて。

直接 唇から コトバを吸い上げる。





.




昼を食べる時間も 惜しくて
空港から チョクで 帰ってきた マンション。

俺の･･･家。



『じ、時間 早いし？ チョット 寄ってく？』


タクシー 乗って。
行き先を 告げる時に。

一応、相手の意思は 尊重した。つもり。

もし、万が一、
俺の予想に反した返事が 返ってきても
何だかんだ 理由を付けて 説き伏せて
最悪、引っ張ってでも ウチに連れて帰る･･･

それくらいの《意思確認》だったんだけど。



小さな顔を隠す デニムのつば が
ゆっくり 縦に落ちるのを見たら、もう。

俺の心臓は 忙しなく走りだして
タクシーん中で フルマラソン状態。

脳みそから《エントツ》に直結してる血管を
どうにか 必死で せき止めて
デニムのアタマを 肩で支えてたけど･･･

俺のバクバクは
俯いた頬を ずっと叩いてた ハズ。



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「むぅ、ん、んんｯ//」


不安定に 反り返ったカラダを 抱き上げて
上から 唇を押し付ける。

驚いて 強ばってた 濡れた接点が
認めて、許して、求めて 弛んでくる。



(欲しい、欲しい、欲しい！)


声にならなくても。
俺の腰と首に 回された腕が
ヒロの 想いを 伝えてくれる。


タクシーに 乗った時から、
いや、飛行機に乗った時･･･

ううん、シェアハウスを出る時、
先にココへ帰るって なった時から
お互いに 欲しいって 求め合ってた。



「ん、むぁｯ！」

ガチガチの《エントツ》を 押し付ければ
切ない息が 隙間から零れる。


「ひ、ヒロ、ベッド 行こ。」

ベッド、ベッドって
念仏みたいに 連呼しながら
ふにゃりとなった腰を抱えて 引きずってく。


真っ直ぐの廊下を。

風呂場を 過ぎて
リビングを横切って
ふにゃふにゃを抱えたまま
寝室のドアに 手を掛けた時には

なんで 玄関すぐに
寝室がある間取りにしなかったんだって･･･


退けた腰で 踏ん張りながら 思った。

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