鬼の瞳 ページ31
新見さんが出かけて行った。
日はとっくに沈んで、辺りは静まっていた。
沖田さんは草履を履きつつ笑った。
沖「じゃあね。行ってくるから。お留守番よろしく」
「はい。気を付けて行ってきてください。怪我をなさらないように」
沖「それはどうかな。まあ、あんな人に怪我させられるとは思わないけど」
「油断は禁物ですよ」
沖「はいはい。わかりました」
見送るなんてそんなにないから、なんて言うべきなのかわからない。
土方さんは先に出て、もう歩き始めている。
斎藤さんは無言だったが、お気を付けて、といった時には少し笑って
「ああ」と返してくれた。
土「・・・おい、早くしろ」
こっちを振り返って土方さんが不機嫌そうに言う。
沖「今行きますよ・・・・じゃあね、A」
「はい。いってらっしゃい」
斎「影宮、あんたも怪我しないようにしておけ。左之たちもいるから
何かあったら頼るといい」
「はいっ!ありがとうございます」
俺を気遣う斎藤さんの言葉に心がじーんとした。
俺、久しぶりに気遣われたかもしれない。
闇に溶けていく三人の背を見送って、俺は羅刹のいるほうへと向かった。
ガンッ・・・
カギを壊して研究室に入る。
埃くささと、獣臭。そして薬品のにおいの混じった空気が俺を覆う。
羅1「っあ・・・・・助けてくれェ・・・頼む・・・」
壁につながれた哀れな羅刹が俺を見て言う。
腕の鎖がガチャガチャと鳴っていた。
悪いな・・・
助けてはやれん。
羅2「・・・助けてくれェ・・・」
憔悴しきった瞳の中に、とんでもない物の怪の気配を感じる。
逃がしてやりたい。けど、
逃がしてはやれない。
あの人たちを裏切るわけにはいかないから。
ごめんな。
その代わり、痛みすら感じないくらいすぐに殺してやる。
「・・・・楽にしてやるよ」
希望に顔をあげて俺と目があった片方の羅刹は、恐ろしさにがたがたと震えだした。
それを見たもう片方の羅刹も青くなる。
「大丈夫。あっという間だ」
羅1「た、たすけてくれ・・・お願いだから・・・」
醜態をさらし続ける右の羅刹から先に殺してやろう。
本当にごめんな。
羅1「・・お・・・鬼・・・・」
鬼・・・?
ああ、そうだな。俺は鬼かもしれない。
すっと刀を抜く。
相手の心臓めがけて俺は、刀を突き刺した。
声も上げず、目を見開いて羅刹は果てた。
羅2「う・・・あ・・・あぁ・・・」
同じように刺そうとすると、ガン、と音がした。
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付雲さくや - すみません…失礼します。 龍之助は『伊吹』ではなく、『井吹』です。 (2018年3月17日 21時) (レス) id: 3d0c4baa71 (このIDを非表示/違反報告)
心音桜花(プロフ) - ありがとうございます!うれしいです☆ (2013年11月8日 21時) (レス) id: babb1f1075 (このIDを非表示/違反報告)
ソラウ - すごく好きな主人公さんです♪続きがすごく読みたくなります! (2013年11月8日 21時) (レス) id: cc1ae89777 (このIDを非表示/違反報告)
心音桜花(プロフ) - ありがとうございます!頑張ります♪ (2013年10月20日 18時) (レス) id: 512126c44c (このIDを非表示/違反報告)
千花羅(プロフ) - 面白かったです♪続き楽しみです^ ^ (2013年10月20日 14時) (レス) id: 7bfc1ac2a8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:心音桜花 | 作成日時:2013年10月5日 21時