154標的 家路への段 ページ4
私はマーモンさんに連れられ扉を出ようとした時、ふと思いたち男の方に振り返り声をかけた。
「そう言えば、まだ貴方の名前を聞いていませんでしたね。よろしければ教えてはいただけないでしょうか?」
「……ザンザス」
「ザンザス、さん……えっと、ありがとう、ございました」
深く一礼して笑みを浮かべると、ザンザスさんは目を少しだけ見開いたような気がした。
何故"気がした"なんて言うかと言うと、確認しようともう一度ザンザスさんの方を見るといつもの無表情に戻っていたからだ。
その後、マーモンさんと一緒に長い廊下を歩いていると今まで黙っていたマーモンさんが私に声をかける。
「君、なんでさっきボスに"ありがとう"なんて言ったんだい?」
「? どういう意味ですか?」
「どういう意味って……僕が言うのもなんだけど、君を拉致するよう指示を出したのはボスだよ」
「それはそうですけど……最終的に家に帰してくれるみたいですし、それに関してはちゃんとお礼は言わないといけない気がしたんで」
だからお礼の言葉を言っただけですと自分の本心を言うと、マーモンさんは意外そうに「そう」とだけ言った。
といっても、マーモンさんはフードを深くかぶっているから本当のところどう思ったかなんて、私には分からない。
それから行きと同じように車に押し込まれ、私は最初に彼らと出会ったあの路地裏近くまで送ってくれた。
「あの送ってくださって、ありがとうございました」
「別に。僕はボスの命令を聞いただけだよ」
「それでも、ありがとうございます」
降りるときにそう言って笑みを浮かべると、マーモンさんはフード越しに私を見てその後深く息を吐いた。
「……ボスが君を気に入った理由。何となく分かった気がするよ」
「へ? 今のどういう」
「じゃあね」
マーモンさんの意味深な言葉を追求しようとするが、マーモンさんはそれを許さないとでもいうようにバタンと扉を閉め、車はそのまま発進していった。
私はでかかった言葉を飲みこみながら、走り去っていく車を見送るしか出来なかった。
「……まぁいっか。兄さん達に詮索される前に早く帰ろう」
そう思い、私は急いで家路へと向かうのだった。
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長月シキカ(プロフ) - ニャン将さん» コメントありがとうございます!ここの所更新が思うように進まず申し訳ありません。これからも頑張りますのでよろしくお願いします_(._.)_ (2017年4月16日 22時) (レス) id: 638c65a19d (このIDを非表示/違反報告)
ニャン将(プロフ) - 更新楽しみにしてます。頑張ってください! (2017年4月15日 21時) (レス) id: 74292a2e84 (このIDを非表示/違反報告)
長月シキカ(プロフ) - かえさん» コメントありがとうございます! かえ様のお言葉大変嬉しく思います! これからも頑張りますので、どうぞよろしくお願いしますm(._.)m (2017年2月26日 23時) (レス) id: 547ce2e1e2 (このIDを非表示/違反報告)
かえ - とっても面白いです!更新楽しみにしています。 (2017年2月26日 23時) (レス) id: ad74bb0de7 (このIDを非表示/違反報告)
長月シキカ(プロフ) - ニャン将さん» コメントありがとうございます! 誰オチエンドにするか、また別のエンドにするかいまだに悩んでいるので今の段階で誰オチと言う事が出来ません。こんな作品でも最後まで見て頂ければ心から嬉しく思います。本当に申し訳ありません。 (2017年2月17日 23時) (レス) id: 638c65a19d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:長月シキカ | 作成日時:2017年2月13日 15時