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好きでいさせて、なんて言われて、肯定も否定もできず、私もどうしたらいいか分からなくなる。この後何て言えばいいんだろう、なんて頭を巡らせていれば、上から軽く笑い声が聞こえて。
「てか、おとちゃん、好きって言ってる男に簡単に抱きしめられちゃだめじゃない?」
『えっ!?』
「ははっ、俺がこうしたんですけど(笑)」
『んーっ、じゃあ離れるーっ』
「ふは、ごめんもうちょっとだけ。綺麗事に聞こえるかもしれないけど、俺はおとちゃんが幸せになってくれれば、それでいいです」
『…………っ、優しすぎだよ』
「だからこれからも、後輩として、可愛がってくださいね」
そう言われて、抱きしめられていた腕が緩まって、体が離れて、しばらくぶりに目が合う。
「まーた、悲しい顔してる」
『してないよ』
「してる(笑)これからも仲良くしてくれます?」
『こちらこそ、してくれるの?』
「当たり前じゃないですか」
『これからもよろしくね』
「へへ、お願いします」
それから最初の数十分は少しの違和感があったけれど、解散する頃には元通りの状態にだいぶ近付いていた。
お店の前で別れて、私はタクシーに乗って約束通り良平さんの家に向かう。玄関を抜けてリビングに行けば。
「おかえり」
『ただいま』
こちらに向かって歩いてきたと思えば、ふわっと抱きしめられて、肩口に顔を埋められて、少しくすぐったい。
「…………………えぐの匂いめっちゃする」
『………あ、えっと、』
「そんな至近距離で話してきたの?」
『いや、うーん、えっと、』
曖昧な返事をすれば、さらに問い詰められて、ゆっくりと今日の出来事を話す。話が進むごとに、腕の力が強くなってる気がするのは気のせいだろうか。
『………良平さん?』
「ちゃんと話せてよかったね」
『うん、ありがと』
「はー、だめだ、この匂いがAからするの嫌だわ。お風呂、入っておいで。」
『へ、』
「なに、それとも一緒に入る?(笑)」
『……………うん、』
顔を覗き込んで、少し意地悪そうに笑いながら言われた言葉に、彼の服を掴んで肯定すれば、目を見開かれる。
『……心配かけてごめんね、…良平さんが好きだよ』
「っ、なにもう。ずるいわ、」
『へへ、だって不安そうな顔してたから』
「えー?そう?」
『しーてた。先入ってるから、後から入ってきてね!』
「えー、最初から一緒に入ろうよー」
『やだー!』
「ふはっ、(笑)」
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作者名:シカク | 作成日時:2021年12月1日 20時