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「…………おとちゃん、緊張してます？」
『してるよ！あれから、何か緊張しちゃう』
現場終わり、江口とよく行くお店に入って適当に料理を頼めば、早々に苦笑いをしながら、先程の疑問を投げられた。緊張しないわけがない。
目の前の後輩は、至って普通と言った雰囲気で、運ばれてきた飲み物を口に入れている。
「ごめんなさい、この前。変な空気にしちゃって」
『あ、いや、それは私も』
「軽々しくあんな発言するべきじゃなかったです」
『それは、私も…』
「おとちゃんがあの日言ってた、俺のことを傷つけてたってやつ、」
『うん』
「俺はほんとに、傷ついてとか、ない、から。だから、変に不安に思わせちゃってごめんなさい」
『………ほんとに？』
「ほんと。…………ね、おとちゃん。ここ来てくれませんか」
そう言って江口は自分の隣を軽く叩いて。ソファ席で向かい合っている個室だから、隣に1人くらい余裕で座れる。大人しく、隣に座れば。
『………わっ！？』
急に腕が引かれて、気付けば江口に抱きしめられていて。いっぱいに江口の香りが広がる。
『………えぐ、？』
「あの時、自分がそんな指摘されるほど、悲しい顔してると思わなくて」
『………………』
「ごめんなさい、ほんとにおとちゃんを困らせたかったわけじゃなくて」
『うん、分かってる』
「………俺、おとちゃんのこと、ずっと、好きで。良平さんと付き合う前から、」
『え…？』
「……いま顔上げないで」
そう言って上げかけた顔を、元の位置に押し込まれる。心なしか、肩に乗せられた顔が熱いような気がする。耳元付近でゆっくりとした呼吸が聞こえて。
「良平さんが、おとちゃんのこと好きなのも知ってたし、おとちゃんも良平さんのこと好きなんだろうなって思ってて」
「だから2人が付き合った時も、そうだろうなって思ってたし、俺は2人も、2人が一緒にいるのも好きだから、素直に応援したいなって思ってる。」
「それとは別に諦めきれない気持ち、というか、好きな気持ちはずっとあって。それがこの前、色んなことが重なって出ちゃって。この気持ちも、おとちゃんに言わないつもりだったんですよ」
『……………あり、がと』
「えー？」
『そこまで、私のこと想って、くれて、』
「ははっ、どういたしまして？なんですかね(笑)」
『ふふ、』
「奪おうとか、そんな物騒なこと思ってないんで、まだ、好きでいさせてください」
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作者名：シカク | 作成日時：2021年12月1日 20時
