消えない執着心 ページ27
センラさんが部屋を出ていった後、一人ベッドに腰掛けながらどうしたら黒崎さんとの婚約を破棄できるか、ずっと考えていた。
しかし、考えても考えてもこれといった案は一つも思い浮かばなく、正直に婚約の話は無かったことにしてほしい、と言うしかないということで結論がついた。
義母に言って「はい、そうですか」だなんて返事が返ってくるとは到底思えないので、まずは黒崎さんを説得して、ある程度話を進めてから義母に話すことにした。
義母より先に、黒崎さんに話す理由は、細かく言うと沢山あるが、ざっと話すと『彼は話せば分かってくれる人』だからだ。
以前彼と公園に行った先でセンラさんと遭遇した時、センラさんが彼に素直に謝罪をしたらそれ以上は特に突っ込むということはしなかった。
私がもう帰る、と言った時も変に引き止めることなく帰してくれた。
だから多分、今回の私の要求も、きちんと話せば最後には納得してくれるんじゃないかという期待を胸に、以前お互いの両親により強制的に交換された連絡先に、今度二人で会えますか、とメッセージを送った。
数十分後、黒崎さんから明日の昼間は大学の方が忙しいから夜に会おう、と返事がきたのを確認して、携帯を閉じ、ベットにもぐりこんだ。
今度って言ったし、別に明日じゃなくたっていいのに。忙しいなら無理に時間を作らないで私の事なんて後回しにしてくれていいのに。
そういうこと、しなくていいのに。
そうやって黒崎さんが折角作ってくれた時間を使って、私は一体なんてことを言おうとしているのか、だなんて、また罪悪感に溺れてしまうではないか。
その時、ベッド脇に置いておいた携帯がヴーヴーと、バイブ音を鳴らした。
腕を伸ばして携帯を手に取ると、通知に黒崎さんからメッセージが入っていた。
『明日、楽しみにしてる。お休み、暖かくして寝るんやで』
「っ!」
通知の欄からそのメッセージを確認して、すぐに携帯を閉じた。
黒崎さんは、優しい。
そんな優しい人の気持ちを明日私は踏みにじるんだって自覚して、そして、怖くなった。
あのメッセージをずっと見ていると、彼の優しさと、自分の最低さが見えて、目を背けたくなる。
(…返信は、明日にしよう)
ーーこの時の私は、黒崎さんのことを何も分かっていなかった。分かっていなかったから彼に別れを告げる、だなんてことが出来たのだろうけど。
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時雨(プロフ) - おもちもちもちさん» コメントありがとうございます!!そう言っていただけるとこちらのモチベーションにも繋がりますのでとても嬉しいです(; ;)もう少しでまた更新できそうですのでそれまでもうしばらくお待ちいただけるとありがたいです^^* (2020年2月17日 17時) (レス) id: 27a105a2bf (このIDを非表示/違反報告)
おもちもちもち - やっっっっべぇめっちゃ好きです…(俺の語彙力飛んでった←)更新楽しみにしてるんで、無理のない程度に頑張ってくださいね!(?) (2020年1月17日 1時) (レス) id: b8721ff069 (このIDを非表示/違反報告)
時雨(プロフ) - さくりさん» 返信遅れてすみません…!!コメントありがとうございます!!もう少ししたら更新が出来そうですので、それまでお待ちいただけるとありがたいです…!! (2019年12月5日 21時) (レス) id: 27a105a2bf (このIDを非表示/違反報告)
さくり - 初めてコメントをさせていただきます〜、さくりです!この話自分にドストライクすぎてヤバいです…!更新待ってます!! (2019年11月9日 17時) (レス) id: 11e1fd3e2e (このIDを非表示/違反報告)
時雨(プロフ) - ぽんずさん» コメント&通知登録ありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです、これからも頑張りますね! (2019年7月15日 21時) (レス) id: 27a105a2bf (このIDを非表示/違反報告)
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